2016年10月11日火曜日

高園寺司『吸血女バイオレット』


 高園寺司『 吸血女バイオレット』
怖さ:☆☆☆
造型:☆☆☆
状況:☆☆☆

☆満点作品です!

『中学生殺人事件』という川島のりかずの作品があります。
貸本を除く、「ひばりコミックス」の中で一番高い本、と言われています。ですが、高い本=面白い、という訳ではありません。勿論面白い、他には無い本ではあるのですが、より面白い作品たちが、値段では劣るものの、その後ろにまだまだ控えているのです。

高園寺司『吸血女バイオレット』。
値段の高さでは『中学生殺人事件』に次ぐ2位グループの作品。高園寺司作品は、「まるで狂った人が描いたかのようなおかしな絵・おかしな展開」が狂熱的に感じられる作品ばかり。ただ、中でもこの作品の古書価が上がったのは、群を抜いた「コミュニケーションの取れなさ」があるからではないかな、と。

なんというか、あらすじも書けないので書きません。
表紙の吸血女バイオレットみたいなヤツは吸血女バイオレット「ではありません」。
「吸血女バイオレット」は概念なのです。
と言いたくなるくらい、作中の登場人物たちのやり取り等がぶっ壊れていて、熱狂性だけで見るならデビュー作の『呪いの村』や『呪いの小人』の方が感じられるのですが、バイオレットはそれら以上に、悪夢を見ているように登場キャラクター同士のやり取りが成立しないのです。

個人的に徳南晴一郎の『人間時計』は大好きで、少し高園寺作品に似たところがあるような、と思います。ただ、『人間時計』には怖さが余り無い。狂熱的なもの・異様な造型世界が卓越したものはあるんですが、「バイオレット」のスピード感は無いのです。
其処らへん狙って作り出していたなら、高園寺先生は本当に天才。

「帰るってどこにだね?…道はないんだよ!」と言ったキャラクターが、6ページ後には「みんなが心配している さあ帰りたまえ」と言い始める。
この不合理さが「序の口」レベル。

ここから先は悪夢。
自分がしたいと思うこと・伝えたいと思うことが、全く思い通りにならない。にもかかわらず話が進んでいく。この怖さ、分かりますか?

起きた状態で、体は傷つくこと無く、悪夢を体験したい方。
バイオレット、です。




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