2016年10月19日水曜日

桑原京助「蝉を食べた少年」

桑原京助「蝉を食べた少年」
怖さ:☆☆☆
造型:☆☆☆
状況:☆☆☆



☆満点作品です!

何故か「蝉」を題材としたホラー漫画は、日野日出志から始まり現在のちゃおホラーに到るまで、たくさんある訳ではないものの、何故か途切れない。
しかも、それぞれが子どもたちの心にトラウマを残している優秀さ。

その中でも、長らく「どこに載っているかが分からない、でも皆の記憶に残っている」という変な所在の漫画がありました。
ケイブンシャの大百科シリーズより『恐怖体験3 大百科』。シリーズ中でも昭和期のものは時間が経つほど本そのものが無くなっていくのもあり、これに載ってる!と確定したのは2012年のようです。「ホラー漫画史」を作るならば、この「再発見」は一つの事件、と言えましょう。

そのくらいに、威力のある作品なのです。

桑原京助の名前で載るこの作家さんは、平成期においてもこのシリーズ中で「つなん京助」の名前で作品を掲載しているものの、ついぞ単行本が出ぬまま、現在でも「売れない漫画家になる方法」なんて目を背けたくなくなる様なWEBコミックを描かれている様子。

ただ、どちらの名義でも、このケイブンシャシリーズに載っている作品群が恐ろしくて恐ろしくて…。青木智子さん的ポジションで、もっと日の光を浴びてもらいたいところなのですが…。

いじめの一環で生きた蝉を食べさせられる少年。バキムシャゴキ、と。それをその場で吐き出すだけではなく、食感が思い出されて、帰宅してからも何度も吐く。翌日学校にやって来た少年は「何か」が違っていた。
たとえば、日野日出志や古賀新一ならここで少年をダークヒーローにしたかも。何かに変態・変身するだけなら、数多のホラー漫画家がやってきたことなのですが、下に掲載した画像の一つ前のページから、この漫画は魔界に堕ちる。「何をやっているか分からなくなる」。

「酷いことが起きるには原因がある」「可哀想なヤツは報われなくてはならない」「悪いヤツは酷い目に会う」「子どもが読むものは子ども向けに作られている」そうした数々の「セオリー」が、読む者の「願い」でしかないことを教えてくれる、強烈・狂気的な漫画。
実はこの本を手に入れる以外にも、もう一つこの漫画を読める手段があります。ここに明記はしませんが、是非とも人生の内で二度ほど、読むべき漫画かな、と思います。


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