2016年12月10日土曜日

日野日出志 『恐怖・地獄少女(呪われた赤ん坊が…)』


日野日出志 『恐怖・地獄少女(呪われた赤ん坊が…)』
怖さ:☆☆
造型:☆☆
状況:☆☆☆


日野日出志長編作品。

鬼太郎の如く、誕生と共に死を運命付けられた赤ん坊が、運命を跳ね返しながら生き延びる物語。

「醜さゆえにゴミ捨て場に捨てられながらも、何とか生き延びているが、生き物を摂らなければ、身体が腐り、死んでしまう」という、あまりにハードモード過ぎるところからのスタート地点、地獄少女。
某地獄少女の様な可憐さのカケラも無く、少女かどうかも怪しい外見の彼女が、一人ぼっちで、命を潰しながら生きていく様が残虐に描かれますが、それを単なるスプラッタと片付けることは出来ません。

「人間の食卓に並ぶものは全て人間の手を経ている」から、元の形が見えにくいだけ、人であれ動物であれ、「誰か・何かの犠牲の上に基づく」のが人間の食卓なのです。
地獄少女が人を喰ろうたとて、誰がそれを責め得よう。

とまぁ悲惨な境遇から産まれたモンスターが、人を喰うために暴れ回る「だけ」なら凡作、単なるモンスターパニックなのですが、獣同然の育ち方をして来た彼女が唐突に「人間性に目覚めるシーン」があります。

人は人として産まれるから人なのか?
人を人と定義するものは何か?

改めて、「日野日出志は決してホラー漫画を描くのが好きな人という訳ではなく、自身の哲学を述べるために怪奇が前提として関わってくるだけ」であることを印象付ける作品だな、と思いました。
これは日野日出志哲学を形にした作品の一つ、です。




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