2019年3月11日月曜日

山岸凉子『天人唐草』

山岸凉子『天人唐草』
怖さ:☆☆☆
造型:☆☆☆
状況:☆☆☆
☆満点作品です!

山岸凉子、短編集。
「天人唐草」「キルケー(魔女)」「夏の寓話」「悪夢」4編の内、
3編も素晴らしく不快感・恐怖を催させる作品ながら、個人的に「天人唐草」は山岸凉子ベストホラー短編だと思います。

厳格な父・貞淑な母の下で育った「人工のお嬢様」が地獄に落ちる物語。
父母によって、一見理想の女性像(父母にとって)の様に形作られていった響子。男性の意見には従順に。女の子らしくあるように。性については知らぬ様に。

当然ながら、その響子の中で育てられていった理想像は、彼女が一人で社会に出た時に、その乖離に耐えられず、音を立てて崩れていく訳です。
一つ一つ、踏みとどまれたかもしれない地点で、誤った道筋を選んでいってしまった彼女の、そして山岸凉子自身が敢えて残酷に用意した、地獄の様な結末。

その極端さから、他の作品のように「山岸凉子の漫画(少女漫画)」ではなく、敢えて「ホラー漫画」と呼べてしまいますが、その断片断片の生々しい感情の発露が、恐ろしい…。

2 件のコメント:

  1. お邪魔します~。「天人唐草」は山岸凉子ホラーの中で個人的にNo.2です(1位=“最恐”は「夜叉御前」)。昭和の時代においても古色蒼然たる(一見ハイソだけど)駄目ダメ家庭の悲劇ということで。これ、父も最悪ですが、母もひどいですよね。そうそう、受験戦争の渦中でテンパって壊れる(山岸作品にしては珍しく)男子を描いた「ハーピー」も嫌~な雰囲気でナイスです。

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    1. こんちわです。最近、人に勧められて読みましたが、個人的には「夜叉御前」は読んでる途中でオチが分かり、めちゃくちゃ気持ち悪い、とは思いつつも「天人」を追い越すほどでは無かったです。「ハーピー」、多分未読ゆえ探してみます、ありがとうございます。

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