おおひたごう・武内優樹『まほう少女トメ 1』

おおひたごう・武内優樹『まほう少女トメ 1』
怖さ:☆☆☆
造型:☆☆☆
状況:☆☆☆


☆満点作品です！

あれ？おおひなたごうってギャグ作家じゃなかったけ？
なんかブラックコメディかな？
と思って読んだら大当たり。ホラー漫画的に大当たり。

まほう少女トメは人の願いをひとつだけ叶えてくれる。が、トメちゃんは善意・無邪気で誰の願いも無条件に叶えてくれるのだけど、「どうやって」「何が起こる」といった過程・結果に無頓着であるが故に、願いが叶うことが簡単に破滅スパイラルを産み出す。

「武内優樹」なる人物がイマイチどんな方なのかが分からないのですが、この人のアイデアがまぁー半端ない。

幼子が自殺した不倫相手の幽霊に取り殺されたと思ったら不倫相手は幽霊のフリをしていただけで幽霊には幽霊で対抗しようと自殺した妻と更に別の不倫相手の幽霊と主人公の男の四つどもえになる、
ボケずに不死身でいると願った母が死んだのにボケずに不死身で居続ける、
文章を読む時に脳内で置き換えていた声にうんざりしてその声を消すことを願ったら頭の中に住み着いた殺人鬼に声の主が殺されたのを怨んで声の主の幽霊が殺人鬼を殺す殺人鬼を頭に住み着かせようとする、

これを奇想で終わらせず、毎度「最後」までやる武内原作。
確かにおおひなたごうのギャグ作家としての手腕が、「恐ろしい絵・状況」を作ることに一役買っているのですが、そうした絵・状況だけでびっくりさせるだけでは終わらせないこの魅力的な「語り」。

「願いを叶える系」のホラー、願ったことと結果のズレが産み出す悲劇が定型化されて、ハイハイこういう系ね、となってしまうのに足りなかったのは、この「偏執的な語り」だったんだな、と学習してしまいました。

が！この滅茶苦茶魅力的なホラー漫画、2011年に1巻が刊行されてからあとが出ず…。こんなに突然変異的ホラーなのに、ホラーの定型、「連載時にはそれほどパッとせず打ち切られる」からは逃れられないのか…？