2016年11月7日月曜日

伊藤潤二『ギョ』

伊藤潤二『ギョ』
怖さ:☆☆
造型:☆☆☆
状況:☆☆☆ 


ダリの「聖アントワーヌの誘惑」に、不安を覚えた方は結構居るんでわ。
幼少の頃、アレが俺は無性に怖かった。あの脚の長い象が、馬が。
ひょっとしたら、伊藤潤二さんもアレ怖かったんじゃないかしらん。
だって『ギョ』って魚に脚生えてるじゃないですかー!ヤダー!!

本来「歩」かない魚が陸に上がって暴れ回る。
正にダリ的悪夢と言えましょう。

『富江』『うずまき』で、アイデア勝負的作品が多い伊藤潤二さんはあまり長編・中編に向かない作家なのでは?と懐疑的な気持ちになりましたが、この『ギョ』は前述した作品たちよりも、「変なモノが歩く」というアイデアを上手く螺旋状にねじ上げていけた作品ではないかと思います。
ラストが「俺達の戦いはこれからだ」エンドはすこーし残念ではありましたが…。

変なモノが歩くことを如何に気持ち悪く、斬新に見せるか?、また如何にそいつらに主人公を襲わせるか?が主題になって来る「モンスターパニック」(とはいえ中編以上の長さだとこうならざるをえない気もする)となることで、一番最初の「えっ?魚がすげー早さで歩いて、走ってる!?」という恐怖にも笑いにも身の置き所が無くなる衝撃は、徐徐に失われていきます。そこがちょっと「ホラー」としては惜しい。
けれども、次にどんな手で来る?というワクワク感は、正に「伊藤潤二作品的」。ページをめくる手がとまんねえ。2巻ある作品ながら、読み始めたらやめられない止まらない。

なお、『ギョ』2巻には傑作「大黒柱悲話」と大傑作「阿彌殻断層の怪」が収録。こちらはやはりアイデア勝負の逸品たちになりますので、読んでからのお楽しみ、ということで。





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