了春刀『イビツ』

了春刀『イビツ』

怖さ:☆☆☆

造型:☆☆☆

状況:☆☆

いくつかの出版社、レーベルに対して、「これは面白くない(俺が読んでも合うものは無い)」というレッテル貼りをしているものがあって、エニックスはともかく、スクエニは「ハガレン以外読むものナシ」的スタンスで居ました、自分の狭量さが恥ずかしい。

『イビツ』。『座敷女』に続く、いや並ぶか越すかしてるんではないかと言える、ストーキングホラー。
「ゴミ捨て場に居る白いロリータ女と会話すると、死ぬか妹が出来る」という謎の都市伝説。主人公は運悪く、その都市伝説存在に遭遇してしまいます。

こういう「サイコな人」を主題にしたホラーは、如何に意志が通じそうで通じないか、ってのが怖さの重要ポイントだと思うのですが、この白ロリータは怖い。「一度正体が分かりそうになるシーン」があるにもかかわらず最終的にはコイツが何なのか分からず、意図・思想が読み取れそうで読み取れないんです。
たとえば、モンスターなら「人しか喰えない・目の前に人が居る、ので喰う」とか、殺人狂なら「人を殺したくてたまらない、ので殺す」とやりたいことが明白なので、最終的な恐怖は「如何に主観的っぽくその状況を味わえるか」に掛かっているのですが、
この白ロリの行動目的は「妹になること」。何をしたら妹になるのか分かんないし、そもそも何で妹になるのかも分かんない。つまり、読んでるこっちも「主観・客観かかわらず、次に何が起こるか分かんなくて、怖い」という、ホラーものの理想型みたいなマンガです。

ただ、どうしても「連載作品」という形式上、「如何に白ロリが攻め手を用意して来るか」というビックリ箱的形態にならざるを得ないのが、ホラー状況的に惜しいところ。
1・2巻にそれぞれ、外伝と表記されているものの、まったく本編と関係無いホラー短編が一つずつ入っているのですが、2巻収録「編集奇譚」は正に短編でスパッと終わらせることで、「イビツに足りなかったホラー状況の明快な明示」がやれてる理想的ホラー。まぁ逆に描写がちょっと足りなくなっちゃった感はあるのですが…。

にしても素晴らしいホラーセンスの作家さんなので、また連載持って欲しい！
このマンガの後が「SPEC」のコミカライズだけ、なんて残念過ぎる！！