甘木泉「肉を食む」

甘木泉「肉を食む」
怖さ:☆
造型:☆☆
状況:☆☆☆
https://osoroshiya.com/manga/%E8%82%89%E3%82%92%E9%A3%9F%E3%82%80/



正直なところ、ホラー漫画ではないかなー、という気がしないでもない作品。
ただ、マンガとしてはハイレベルです。

畜産農家の子である主人公は肉が喰えない。
どうしても「豚が可哀想」だからだ。

読めばすぐ分かりますが、この作品のポイントは「豚の造型」。
『御茶漬海苔の妖怪物語』という御茶漬海苔先生の短編集の2巻、「妖怪刑事パック 妖怪コックの巻」という短編が類似したテーマ性の様に思いますが、「実は動物を育てて食べているこの社会って、スゴくグロテスクな構造してない？」という問題提起をホラー的側面から告発、といった作品。

「豚を食む」は要所要所で「パーツの切断」なんかの描写を挟むことで、ああ、肉なんだな、と読者に印象付けて来るものの、話全体としては生き物であることを主張しています。それは肉なのか、生き物なのか。
ラストの1ページ、大ゴマは、甘木さん意地が悪いなあ、と思わせるナイスな一枚絵。

創作物なんかよりも、結局一番怖いのは「現実」ではないかな、と思い返させられるのも、またホラーの魅力。
本作はそうした「振り返らせるホラー」として、一級品です。読もう。