2016年11月13日日曜日

平井一郎「百足」


平井一郎「百足」
怖さ:☆☆
造型:☆☆☆
状況:☆☆☆ 

サスペンス & ホラー 1995年9月号掲載作品。

ヤンマガから『眼力王』全2巻(未読)を出したっきり、レディコミ実録系にフィールドを移してから単行本が出てない作家さん。
おそらくホラーにおける活躍の場はサスホラだけかなー、と思うんですが、この作家さんの単行本は欲しい!

イタズラ小僧の弟が、ねーちゃんに百足の死骸を投げつける。
怒るねーちゃん。
と、次の瞬間、上から沢山の百足の死骸が弟に降り注ぐ。電線から落ちて来たようなのだけど、電線上に姿は見えず。が、何故か揺れる電線が一本。
「死がいがこんなにあるなら生きてるヤツだってたくさんいるはずだ」
とのたまう弟。
二人して、家の中にももしかしたら大量に侵入してるんでは?と疑心暗鬼になる。

見える。
電線から家の中に入る線の付け根が、タイルの目地が、電気のヒモが、
ムカデに見える。

「そ…外へ出ようか?」
と言い合う二人のコマの外には、「ザラ ザラ」と不穏なオノマトペが蠢き始める。

異様な景色を目の当たりに出来る、日常の不安が恐怖へと変わる、ムカデホラー。
ほら、この文章を読むだけでも少し不安になったりしませんか?しませんか?

おしむらくは、兄妹二人のリアクションが、あからさまにクトゥルフ的な「世界を揺らすホラー」的光景になっているのに何だかギャグっぽい。ホラーとギャグのさじ加減は実に難しい。それ故に、今のところ自分が確認した平井一郎ホラーで他作はややギャグっぽくて勧めがたい。

んだけども、この「百足」が見せる「読者の現実を揺らす情景」は、きっと宮本ひかる『ムカデ少女』大好き!!みたいなまず居なさそうなマイノリティ漫画好きをきっと満足させる筈。



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