2011年2月2日水曜日

すべての発情期のサルどもへ『サルハンター』



本屋でちょろっと立ち読みした、『スッパニタータ』という漫画に圧倒されました。
絵は、明らかに女の子とか可愛くないけど、ゴリゴリと音の聞こえて来そうな、重い線でした。
そして、ストーリー。
ギャグと読んでいいのかよく分からない、必死過ぎる主人公と合わない社会環境。
笑いと恐怖は『ズレ』を楽しむものだと思いますが、
これは笑っていいのか?
ひょっとして恐怖すべき所なのか?

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本作、『サルハンター』は同作者・ツギ野ツギ雄さんの古い作品。
僕が買ったのは2004年に復刊されたもので、
雑誌に連載されていたのは95~96年。

ざっと内容をさらうと、

「サルの群れのせいで救急車が止まり、乗っていた恋人がそのまま帰らぬ人となってしまう。
猿の一匹が去り際に『マヌケ』と主人公に言い放つ。
事実を確かめる為、日光山へ向かう主人公。

そこで喋るサルと、サルにレイプされた女性を発見し、
人間である主人公と日本全土に広がる猿軍団の死闘が幕を開ける…」

と。
作者も認めているようにB級映画のような筋立てです。

でも決して「B級映画」という言葉は貶し言葉ではありません。
色々定義はあるんでしょうが、B級映画は突拍子もない筋立てがあり、それに対して主人公が無茶苦茶に向かっていきます。

多分、その「解決」を描くのがA級の仕事で、
「過程」を楽しむのがB級の範囲なんじゃないかと僕は思います。

要は無茶苦茶さを楽しむのですが、解決を目標に映画を進めていくとなんか良くも悪くも綺麗に収まっちゃう。
どうなっても良いからとりあえず突き進んでいくぜ!というストーリーだと、その色々なものが置き去りになっちゃってる感が疾走感として主人公の爆発力に加算されるのです。

『サルハンター』はサル側も凄いですが、主人公の爆発力がともかくアツい
特に前振りも無く、恋人の敵討という理由で日光山へ向かい、
唐突に電磁ヌンチャクを取り出して、怒髪が天を衝いてサルを撲殺&感電死。
ばしばしサルを切り倒し、
いつの間にか特殊部隊の様な様相となって、
題名通りのサルハンターと化す。
最終的には修羅と化す。

あとがきに「なんと絵の稚拙なことか!」と作者の嘆きの様なものが書かれていますが、
その稚拙な感じがソリッド感として、一層作品の熱を高めているように思います。

「すべての発情期のサルどもへ」は本当に最後の最後のページに書かれていて、一見すると主人公のサルたちへの憎しみの言葉にも見えるのですが、
なんか僕には「一緒に馬鹿しようぜ!」という作者からの読者への前向きな文言である様にも思えます。

馬鹿で、力強くて、アホくさくて、青臭いものが好物な人には堪らん作品です。
『スッパニタータ』も早いとこ買おう。


突き抜ける事。
➼決して消えない光がある『正義隊』

周りが見えなくなるという事。
➼これぞ正に「オタク」である『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団』








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