ってことだったので、発売日に購入して来ました。
ちゃんと三条さんのエロ劇画を読んだことは無かったんですが、だって『きりきりぎったん』が凄かったんだもの!買うよ!そりゃ!
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何が凄いって、絵と発想のグロテスクさ・それがなんとなくエロスに引っ掛かってる淫猥さ・展開の凄まじい力技によるシュールさ!三条友美のエログロは凄いんだ!って思い込みが、一冊だけで俺にガッチリとイメージを与えてしまったのです。
そんな訳で、今回の『寄生少女』中の、「うわあ、凄い!」って俺が思っちゃった箇所を短編一作毎にご紹介。
・蛇人形
雨の日、少女は捨てられた子猫を見つける。
彼女は可哀想に思ったのか、子猫を家に連れ帰る。
「みぃー」なんて可愛らしい鳴き声を上げる猫に、何故か謝る彼女。
どうしたどうした?
死んだーっ!!!
そう、ホラーでもエロでもギャグでも、ギャップは非常に大事な要素。
如何に読者に意外性を与えられるか、ってところが各作家の勝負所であり、三条さんはそのギャップを「ホラー・エロ・ギャグ」の三要素全てにおいて両立させている、名作家なのです!
で、その可愛らしいニャンコを惨殺したのが、この「蛇人形」なる奇怪な生物。
事故死か病死か分かりませんが、亡くなった「裕太」の代わりに、主人公の女の子は異形の生物「蛇人形」を降臨させたのです。でも絶対裕太と似ても似つかんだろ、それ!
・真夜中のイタズラ
今時漫画表現としてさっぱり見ない「パンくわえて朝走る少女」、何のギャグかと思ったら、いじめの手段でした。陰湿過ぎるよ…。
いわゆる「ノータリン」なために、いじめられる少女・鮎美と、彼女のほぼ唯一の友人・里花。
…の筈なんですが、このやり取り本当に友人同士の会話か!?
「鮎美…この間の期末何点だった?」
「えっとね 13点みたいな」
「じゅ…13点って… そんなの人間のとる点数じゃないよッ
私なら自殺しちゃうよ!」
お前絶対鮎美のこと嫌ってんだろ!
・マミーちゃん
いっつも包帯をしているので「マミーちゃん」と呼ばれてバカにされてる女の子の、包帯の下にはジガバチみたいなヤツの卵でびっしりでした。
その子の家に遊びに行ったら、私も卵を植え付けられました。
ちっちゃいアリみたいなヤツが集団でグワーッと襲いかかって来る訳ではなく、かといってバイオハザードに出て来そうな人間サイズの蛾みたいなヤツでもなく。
この、虫の、何とも言えない絶妙なサイズ感がメチャクチャ怖いです。
・蟲病院
看護学校の実習で病院に行ったら、地下室に死に別れた彼氏そっくりの顔で体は芋虫、って感じの人が居ました。
まぁそれも何か状況について行けなくて非常に怖いコトではあるんですが、その地下室に連れて行く先輩看護師が妙に怖かったです。
「エッセン!」(食事、食事をさせること)
「食べさせないとステっちゃうよ」(食べさせないと死んじゃうよ)
・シャカシャカピエロ
またもやいじめをテーマにした作品。
いじめにまつわる陰惨さは、ホラーに転化しやすいようですね。
豚子と呼ばれ、いじめられる舞子。
そんな彼女が、トイレに追い詰められます。
トイレに閉じ込めた上に、豚の内蔵までぶっかけるいじめっ子。
お前らは悪魔崇拝者かスターリンか!どっから調達してくんだよ!!
投げ込んだけど、逆に舞子は何の反応もしなくなりました。
どうしたんだと思ってドア開けると
…怖いわ!!何この状況!!
・彼氏はケダモノ
「タカシのこと怪物だって… こわいよ…
友ちゃんまでおかしくなってる」
…そうかぁ…。
・寄生少女
表題作です。ダイエットのためと称して、危なげな医者に寄生虫を体内に入れられる少女達。最早、寄生虫の域を脱してますね。
「見ないで」っていう乙女心が泣かせます。でも見ちゃいますね、こんな状態だと。三回くらい、エエッ!?って見返すと思います。
で、上の画像の状態になった女の子が、同じように「なりかけ」の女の子を救う為に手術してくれ、とその女の子のことが好きな男の子に頼みます。
「俺ができるわけないじゃん ずっと理科…赤点ばっかなのに
麻酔だってないのに!」
仮に彼が理科で満点取りまくりでもイヤ過ぎますね、手術する側もされる側も。
その後の彼の
「人間の体の中ってこんなにグチャグチャなんだ わけわかんないよ!」
という台詞が、絶望的な状況に拍車をかけます。そりゃわけわかんないよな!
・きりきり同盟
この作品も台詞回しが狂ってます。リストカッターの女の子が、リスカオフ会みたいな所に来る。
ホストっぽいお姉さんに、すぐリスカしたがる私っておかしいのかなぁ?なんて相談したら、こう返される。
「切りたくなったら切る(はぁと)」
いや、頭痛薬のCMじゃねぇんだから!!
で、こうだよ!!人の体だと思って、お前ら無茶苦茶し過ぎだから!!腕落ちちゃったら、もうそれリスカとかってレベルじゃねぇから!!!
…とまぁ、こんなに素敵に狂った作品ばかりで、俺は感想を漏らすどころか、反応するだけで精一杯なのですが、やっぱりこんな作品を作れる人達は、ガチキチで、作ってる作品の絶対性を信じる狂信者みたいな人達に違いない、なんて思い込みで最後まで読み進めていったところ、巻末に編者の劇画狼さんと、三条友美さんの対談が掲載されていました。
「どこが「へび」なんですか?」
「最初はもっと蛇っぽいデザインでスタートしたんだけど、いつの間にかデザインが変わってタイトルだけが残った…」
等と書いてあり、あ、この人達はまともな人達だ、オカシナものをオカシイと感じられる人達が作ってるんだ、良かった、なんて筋違いな安心感を得てしまいました。
とりあえず、破壊力は抜群な作品集です。
ホラー・エロ・ギャグ、いずれかの漫画ジャンルが好きな方なら誰でも楽しめる作品集であること、間違いなし。
こちらと、まんだらけと、タコシェで買えるようです。
なめくじ長屋奇考録 - 三条友美ホラー短編集「寄生少女」、本日正式発売&皆さまへのお願い。
あと、この本が出来るまでの過程も非常に面白かったです。
白取特急検車場【闘病バージョン】 - 「寄生少女」顛末
是非是非お試しアレ。
伊藤潤二さんも、よくギャグかホラーか分かんなくなります。
➼恐怖と狂気とギャグの狭間で『怪奇カンヅメ』
網野成保さんの作品集とか、復刊したりしねぇかなぁ。
➼現実を揺らす現実感『リアリティー』
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