Subbacultcha

「サブカルチャー」という括りの下、文学・芸術・漫画・映画等について述べます。

2011年12月13日火曜日

恐怖と狂気とギャグの狭間で『怪奇カンヅメ』

富樫先生の元ネタ、との声もある伊藤潤二さんについて。確かに顔の描き方なんかパクリと言っても良いほど

作風では、ホラーと言うよりも駕籠真太郎さんのような「奇想」と呼ぶに相応しい作家さんかと思います。
ただ、駕籠さんは明確に奇想ギャグを志向しているのに対して、伊藤さんのはもう怖いんだか笑って良いんだか、反応に困るような所があります。それだけ、異様な状況とそれを視覚化した絵で作品が構成されているのが伊藤潤二作品

本単行本『怪奇カンヅメ』においても、見た人が「何ぞコレぇェェ」と反応してしまう様な、奇怪な絵が幾つかありましたので、ご紹介いたします。・・・また表紙が良いなぁ・・・。


本単行本は収録作品が一貫性無くとにかくドカーンとブチ込んであり、
収録作品も8作品と多めで、正にカンヅメ。
以下、収録作。

1:仲間の家
2:ナメクジ少女
3:隣の窓
4:漂着物
6:異常接近~ニアミス~
7:怪奇ひきずり兄弟◎次女の恋人
8:怪奇ひきずり兄弟◎降霊会



一発目。

「仲間の家」より。
前門の虎、後門の狼ってやつですね



二発目。

「なめくじ少女」より。
この話がまた酷くて、なんで!なんでこんな展開になるんだ!という不合理・不条理さ。このシーンは女の子の舌がなめくじになっちゃった、という。ワケが分からないよ。
2006年にある騒動にてこの作品がクローズアップされましたが、気になる方は「なめくじ少女」でググってみて下さい。僕はそれよりも、「なめくじ」を検索バーに打ち込むと、検索候補の上から三番目に「なめくじ 食べる」を表示するグーグル先生に狂気を感じました。



三発目。
「隣の窓」より。
結局この人は単に病気によってこういう外見になった人だったのか、妖怪だったのかはよく分からない終わり方でしたが、正に絵のインパクト勝負のお話でした。この絵を見るだけで、何か呪われてしまうんじゃないか、と不安になるような迫力があります。ひとまずハート形のイヤリングがチャーミングですね


四発目。
「漂着物」より。
海岸に漂着した何かグロい、生き物の死体の様なもの。野次馬や科学者がその正体を見極めるために大量に集まり、その死体の腹を掻っ捌いてみると、というお話。中々にドギツイオチが付いてくるお話ですが、僕はむしろその「何か分からない海から来た生き物」の、謎めいた生き物具合がとても上手くデザインされている所が印象的でした。海の得体の知れ無さを、そのまま形にしたような、良い意味で気持ち悪いデザインのクリーチャーです。
しかし、この擬音はなにか気になるな・・・。



五発目。

「ご先祖様」より。
なめくじ少女と共に、この単行本において双璧を成すインパクトのある絵。夢に出そう。
まぁアレです、福禄寿の亜種みたいなもんです




六発目。
「怪奇ひきずり兄弟◎次女の恋人」より。
中々コンビネーションとインパクトを感じさせる化物共ですが、この画面に出ているのは全て人間です
諸星大二郎における「栞と紙魚子」のような、ホラーをパロディギャグ化して連作にしたのがこの「怪奇ひきずり兄弟」。この単行本に二話入っているので、もしかしてシリーズ化してんのかなぁ、と思ったら在るのはこの単行本二話だけの様子。
全作がホラーの中、この二作だけが明らかにギャグ志向で、この単行本のカンヅメ色は正にこいつらによる所が大きい。何が言いたかったかと言うと、お前らはお前らだけで単行本化しろよ、と。
とりあえず真ん中で恐怖してる人には申し訳ないですが、なんてバカっぽい場面なんだ




ラスト、七発目。
「怪奇ひきずり兄弟◎降霊会」より。もうこの絵を見るだけで、状況の変さに笑いそうになります。
手前のデブが良い味出してるぜぇ・・・。



わざと、何故こんな状況になったか、はあまり言わなかったつもりです。何でこんな変な状況になっちゃったのか、巻き込まれるキャラクター達に感情移入して読んだ時、自分の力ではその状況を抜け出せないことを自覚させられるところに伊藤潤二さんの不条理な怖さ・不合理な面白さがあります。
ぜひご自分の眼で、ご自分の脳で、その狂気的に変な世界に触れてみて下さい。



番外。
本単行本には収録されていない「長い夢」という傑作より。

「私、死ぬしかないじゃない!!!」
・・・マミさん・・・




ギャグなんだかホラーなんだか少女漫画なんだかよく分からない魅力。

➼ずんどこ耽美、ポップに残酷を楽しむ『創世記』


富樫。
➼継承すること『HUNTER×HUNTER 29』



「長い夢」を収録した単行本。



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