Subbacultcha

「サブカルチャー」という括りの下、文学・芸術・漫画・映画等について述べます。

2013年10月3日木曜日

ダーガーズチルドレン、南房英彦『うんこの町のメリー』

以前知人に見せてもらってから欲しい欲しいと思いつつも中々発見出来ず、
遂に手に入れた稀覯本!!
中身にもう一度触れたいと思っても、ネット上にある情報は、古本屋さんが「カルトです」と評する一文程度の紹介ばかり…

手に入れたよ、っていう自慢も含めての内容紹介・感想です。


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てーん

てーん

ババーン

タイトルコールが明らかに漫画のそれではなく、映画文法に沿った、あざとい演出。
こういうの俺痺れちゃいます。
画太郎先生もよくやってますが、見る度に痺れちゃいますよあたしゃぁ。
「ニコライ・B・ゴーゴリ」ってそれっぽいロシア人名が書いてあるだけかな、と思ってたんですが、実際にニコライ・ヴァシーリエヴィチ・ゴーゴリって作家さんが居るんですね。
ロシア文学はさっぱり分からんので、ゴーゴリとメリーと、両方を読んだことがある方、どのように原案が採られているのか、ご教授願います。

物語は、「うんこの町」という町における、「メリー」を中心とした様々な人間を描く群像劇。
ある新米教師が、初月給で酒を呑もうと居酒屋へやって来ます。

そしたら、なんかまともじゃない感じのヤツがやって来て、店主に「コーヒー牛乳をくれ!」とか言ってる。ヤバいヤバい、関わらないようにしよう…

って傍観決め込もうとしてたら、店主が殴り殺される。
…うんこの町、こえー…

こえー、と思ったら、また何かヤバげな雰囲気の女の子が現れて、ヤバげなおっさんと対峙します。因縁の対決…!?

って思ったら死んだああああああああ
ホゲーッ

何処かから「うんこの町」に帰って来たらしい、彼女の名前が「メリー」。
過去に様々な因縁をぶら下げたままこの町から消えたらしく、騒音おばさんみたいな人がメリーに毒を吐いています。

そんな「うんこの町」は、労働者の町。支配階級である町長の屋敷の周囲は、町の人びとのデモ隊に囲まれています。
画面右下は、甘やかされて我がままに育った、その市長の娘と、彼女の家庭教師。一応、キーキャラなのですが、大筋の部分には関わって来ない傍観者的立場の二人で、いわばかれらは読者の分身。

そんなデモ隊の中心に、突然空から怪物が降り立つ!
サトゥルヌス!!
 暴れ回る怪物に対し、成す術も無くズタボロに引き裂かれる街の人びと。

町の外からやって来た、神聖モテモテ王国の人を強そうにした装飾の、怪物と因縁のありそうな謎の軍人。怪物との戦闘態勢に入ると思いきや、怪物の身内、と思しきものの死体を見せつけて怪物を挑発。

その後、もう一体怪物が出て来て、怪獣大決戦。街が壊滅。
ゴッホ!!

壊滅した街とは別の空間で繰り広げられる、「大筋の物語」。
「うんこの町」は現実の世界でありながらも、虚構の町でもあった、と示されます。
「メリー」という存在が、「試しに人間として生きるための空間」。
しかしそれは失敗に終わり、「自分が『メリー』ではない者」であることを、「超越者」によってメリーは思い出さされます。彼女の正体はブレンギグロメニアン。
ブレンギグロメニアン!!

「超越者」の名は「ロプロプ」。ロプロプ!
彼らの名が、何処かで見た様な文字列であるのは、『胎界主』(subbacultcha:このWEB漫画(企業が関わらないヤツ)がヤバい!10選)でも述べられている様に、「この世界に存在するための認証パスワード」みたいなもんなのかもしれませんね。
そして、消えていく超越者たちと、取り残される町の住人。虚無を突きつけられる様なエンディングと、もう一度現れる「メリー」によって暗示される、繰り返される虚構の物語。

物語の緻密さや巧みさにホゥ、ってなる様な話じゃないんですが、所々に見られるパロディチックなコマや、バトルシーン・虐殺シーンの生み出す異様な加速感から生まれる「カルト」と呼ばれる作品の雰囲気。
大好きです、「うんこの町のメリー。」

この本は自費出版本であり、本人ではなく、南房さんの友人によって製本されたらしきもの、らしく、奥付・あとがきの類いはほぼありません。故に、著者が他にどんな漫画を描いていて、どんな人で、ってのがさっぱり分かりません。
以前知人に見せてもらった際に、小紙片が挟んであり、
「南房秀彦は山のように漫画を描いたけど、その登場キャラをほとんど本書で殺してしまった。その後行方不明。知人によって、単行本化されたのが本書」
なんてことが書いてあったのですが、今回購入したものにはその紙は無く。
あの紙はなんだったんだろう、と思わされます。

でもその「山のように漫画を描いた」っていう一文が気になって気になって…
同人誌としてでも存在するなら、是非手に入れたい逸品です。
というか、行方不明ってのも嘘で、知人によっててのも嘘で、ほんとはこの本、「そういう設定で作られた本」なんじゃないか、なんて思ったりもするのですが…
それはそれとして「手に入りにくい本」であり、かつ「カルト的な本」であることは間違いないので、見つけたら即購入をお勧めします。大体古書市場価格が3000~10000円程度。

「ダーガーズチルドレン」なんて記事タイトルに付けたのは、「ブレンギグロメニアン」(『非現実の王国で』に登場する、子どもを守る良い怪物達の総称。 subbacultcha:僕と共犯者に成りませんか?『ラフォーレ原宿:ヘンリー・ダーガー展』)が登場する、ってところもあったのですが、舞台をそのままタイトルの中に入れ込む点・徹底的な妄想で形作られた強固な雰囲気を漂わす「カルトっぽさ」・「奥」を感じさせる大きな物語空間を作っておきながらも、それを徹底的に自分で破壊しちゃう点・それだけ必死で作ったであろう作品を特に発表することもなく作家としての人生を終えて、それが知人に出版されちゃうという点などなど、すごくこの本自体が「ダーガーっぽさ」を持ってる本ゆえ、です。
だからこそ、「これそういう設定なんじゃないか」って邪推しちゃうほど、俺が大好きな雰囲気を持ってる本なんです。
なので、しつこいんですが、見つけたら即買い、だと思いますよ!


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