Subbacultcha

「サブカルチャー」という括りの下、文学・芸術・漫画・映画等について述べます。

2017年2月17日金曜日

白川まり奈『吸血伝』

白川まり奈『吸血伝』
怖さ:☆☆☆
造型:☆☆☆
状況:☆☆☆

☆満点作品です!

御多分に洩れず、白川まり奈先生の作品にはQJの「キノコンガ」から入門したのですが、
キノコンガ以降、曙コミックス後期からひばり書房単行本にかけて、白川作品は、やや脱力系へと姿を変えていきます。そんな自分が一番好きかも、という白川作品は、ひばりヒットの『怪奇!ニャンシーの街』ではあるのですが、とはいえ、白川先生の真骨頂はそこに至る前の、曙コミックス前期の「闇」を感じさせる威力のある絵、にこそあります。

『吸血伝』。
なんと4部作のうちの一つ、という所も怪奇漫画ファン泣かせの要素の一つなのですが、まぁー、これ以降出て来ない。読みたいのに読めない!
また、単に出現率が低いだけで無く、「大河伝奇漫画」として強烈に面白いのです。いわば、裏通りの漂流教室・妖怪ハンター、と言いますか。

医学博士のハンスは吸血鬼病(吸血鬼化、もしくは吸血鬼による被害を受けた者の示す状態を「症状」とみている)の研究者。彼が病の原因を探していた時に見つけた古城には美しい姉弟が住んでいた。彼らと親交を深めるハンスだったが、付近の村人は彼らを吸血鬼である、と睨んでいた…。
西洋が舞台ながら、偏狭な集落・偏見まみれの集団・呪わしき因習が揃い、忌々しくも壮大な物語が幕を開けます。

とはいえ、『吸血伝』は単体で物語として完結しており、その後のシリーズもシリーズ化しているものの、それぞれ単体で面白いです。ですが、シリーズとして捉えた時に、面白さは更に累乗!

更に更に、漫画としての面白さに加え、水木サンや諸星先生の大成の要因と同じく、白川先生は資料の読み込みと、それらの用い方が非常に上手いです。オカルティズムと妖怪研究とを存分に利用した作品群として、白川作品はもっと評価されるべき!

…手に入れにくいんだよなぁ…。






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