日野日出志 『黒猫の眼が闇に』
怖さ:☆
造型:☆☆
状況:☆☆☆
ゴミ捨て場に産まれたひとりっぽっちの黒猫。ゴミ捨て場から出てみると世界は広く、不思議なモノで溢れていた。不思議なモノを作り出す、「人間」。人間が何なのか気になった彼は、自分の眼で人間を見て回ることにした。
人間とは何なのか、という黒猫の疑問を通して、奇怪で弱々しく哀しい4組の人々の姿が描かれます。
ホラーとして見た時、語り部の居る作品は怖くなりにくくて、
なんでかと言うと、「作品を見てる自分」で、心は、作品と自分の間に壁を作る・「対象化」する動きを計るのですが、「語り部」の存在は更にもう一枚壁を作っちゃうのです。
「語り部が無事にそこで物語を語っている限り、漫画を読んでいる自分は怖い目に合うことは無い」と。
案の定、この「黒猫」、猫が冷静に人間観察をしているのもあって、全く怖くありません。
が、「怪奇」を通して「人間存在とは何か」を描かんとする日野日出志作品中において、屈指の詩情漂う作品です。
描かれる人間の姿は、流石に日野日出志作品だけあって、かなり怪奇な状況に陥った人々ではあるのですが、けれども彼らの持つ「弱さ」だけはどうもリアリティがあって。
で、キャラクターと読者の間に黒猫が挟まることで、冷静にその弱さを見つめ直す自分に気付く、のがこの作品の「日野日出志作品としての特異性」。
「蔵六」に日野日出志の魅力を感じた人には、是非一読してもらいたい作品です。
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