昨日観て来ましたが、凄かった。
キャッチコピーで似た様なことを言ってますが、言葉で語れる映画ではない、ので、感想をメモ程度に。
特に映画改変などはなく、五十嵐大介原作の精緻な映画化。ストーリーの概略は漫画の感想に書いてるかと思います。
生命の不安定さ・不穏さが放つ、恐ろしさと美しさをよくぞ絵にしたものだ、と漫画を読んだ時に凄い衝撃を受けましたが、よくそれを映像にした、と震え上がるような映画でした。
…映画を観るまでどんな話だったか全く思い出せませんでしたが(まぁ単に俺の覚えが悪いだけってのもありますが)、改めて映画も言語化出来ない。言語を圧倒する、凄まじい絵・映像。
ともかく、眩しい・美しいシーンを描いていても「怖い」という感覚が離れませんでした。もう初っ端、ヒロイン・瑠花が、怪我して痛むはずの足を無視するように坂道を駆け下りる所から怖い。
最近「打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか? 」を観たのですが、新房昭之とか、たとえば新海誠とかの描く「青春アニメの主人公が爽やかに駆ける美しい街並みと駆け姿」のような雰囲気が本作にはなく、「足の痛みも心の痛みも振り切るようにがむしゃらに走る、次の瞬間に何か嫌な事が起きるのではないか、という不穏さ」、怖くて怖くて。ソリッドながら何処かガタついた描線の(決して「キレイな」ではない)、五十嵐大介の絵柄が見事にアニメーションに導入されていました。
「生命において、極小ミクロなものが極大マクロなものと、瑣末な差異が無限な物量と、似通っている部分があるというか、かなり眼を離して見れば同一である」
ということを描く「祭り」のシーン、原作からして抽象度が高過ぎて何言ってるか分からないので特に何も言えないのですが、
強いて言えばコレ(神話)を描くために、原作を圧縮したことで、瑠花を初めとした「人間の物語」は描写が薄く、唐突な感じが多かったので、「ソッチまで訳分かんなくしちゃうんかい」と映画観ながら突っ込みたくなるところはあったけど、不穏さと「祭り」を映像化してくれただけでもう、胸いっぱいです。
いや、でもハンドボールから始まりハンドボールに終わる構成とか、瑠花の肩に止まるカミキリムシとか、「物語」を演出するシーンもグッとくるところが多々ありました。
不勉強でこの「渡辺歩」さん、という監督を全く知らなかったのですが、おそらく敢えて作家性みたいなものを強調されない作風の方、なのかな、と思いました。映画化作品としては非常に精緻な、でもアニメーション映画として観るなら、ただただ光と物量と変化に圧倒される凄まじい映画、でした。
あと、STUDIO4℃ファンで無くてきちんと知らなかったのですが、終盤の疾走感で「マインド・ゲーム」を思い出してて、コレSTUDIO4℃作品なんですね。「鉄コン」とか。製作会社縛りで少し観てみたくなりました。
やけに音楽が不穏にステキ、と思ったら久石譲。そして、瑠花の声が実に思春期で不安定、イイ、と思ったら芦田愛菜。観ている最中は映画のスケール感に圧倒されていたものの、観終わったらミニシアター感が強く(上記「ソッチまで訳分かんなくしちゃうんかい」というちょっと不親切な感じ)、よくこれ興行収入ランキングに名前が挙がったな、と思いました。とはいえおそらく、こうした製作陣の隙の無さ・技術力の高さが、映画・物語としての訳の分からなさをねじ伏せてるところもあるかと。
米津玄師による主題歌。文句なしの名曲で、エンドロール、流れ始めからガンとやられました。…ただ、余りにも歌詞が作品内容まんまなので、歌詞字幕表示はしない方が、この映画を観た視聴感に水を差されんような気も。でも、このボーカルの効果の掛け方とか、サビの「星空」感とか、余りに「この映画の主題歌」。すごい。
映画観終わってから、自分の『海獣の子供』漫画の感想を見返して「読んだの7年も前!?」とビビってしまいましたが、「マインド・ゲーム観てからもう9年!?」と改めてビビりました。文章の恥かし感に笑う。
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