Subbacultcha

「サブカルチャー」という括りの下、文学・芸術・漫画・映画等について述べます。

2021年3月25日木曜日

界賀邑里『かえらずの雨』

怖さ:☆☆

造型:☆☆☆

状況:☆☆☆

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界賀邑里・個人サークル「異賀村」発行の同人シリーズ『かえらずの雨』、2017年に1巻を発行、2020年に全6巻で完結。

実地的にオカルトに見識の深い謎のホームレス・一尾は、誕生の折に手助けした女の子が高校生になってある困りごとを抱えているところに再会する。彼女にまつわる「呪い」、それに誘引される「怪異」と、要因となる「怪奇」を描く、長編怪奇漫画。

ホラーはどうしても「ビックリ」と相性が良く、短いスパンを目指して描かれる同人・読み切り作品は衝撃的なワンシーンやオチに頼らざるを得ないことが多く、逆に商業長期連載作品だと主人公の周囲は安全圏で緊張感が無くなったり、と「長編怪奇漫画」という存在自体がとてもムズカシイ概念だと思うのですが、『かえらずの雨』は界さんの描くことへの追求が途切れず、本当に素晴らしいシリーズでした。

「厄介ごとを持ち込んで来た女子高生・澪弥」にのみ起こる事象に終始せず、解決者である一尾のバックグラウンドにもメスを入れていかなくてはいけない状況、彼が「そう」なってしまった原因にも光を当てなくてはいけない状況は、「長編怪奇」における「主人公は安全圏」から彼を引き摺り下ろし、最初から最後まで緊張感が抜けませんでした。

前述の「ビックリ」、一時の恐怖感を求める人間にとっては、あっさりした死の描写や異形との戦闘シーンに物足りなさを覚えるかもしれません。しかし、「怪奇」に触れたい人にとっては、必ずや満足のいく作品かと思います。

…最終巻の犬、感情をすごい持ってかれてしまう

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