Subbacultcha

「サブカルチャー」という括りの下、文学・芸術・漫画・映画等について述べます。

2025年1月29日水曜日

池川伸治『肉面』

怖さ:☆

造型:☆

状況:☆

池川先生、ホラー漫画頻出テーマ・女の子の美醜にまつわる怪奇漫画。

貧乏で顔も悪い夏目は、金持ち・美人でおまけに心まで高潔な美美子が憎い。そうして羨む自分の心の醜さは、境遇で形成されたもので、美美子だって自分の様な境遇なら心までは美しく保てなかっただろう、と考えている。

人を憎み・世を憎みしている内に、あるきっかけから夏目は「他人の顔そっくりな擬似皮膚・面の様なものを作るマッドサイエンティスト」に出会う。彼と知り合った事で、夏目は変身・更に悪心を抱く…。

おどろおどろしいタイトルの割には、終始陰気な少女漫画、といった雰囲気の作。残念ながら、池川先生の持ち味たるコミカルな空気も、トンデモ論理のトンデモ展開も存在せず、ひたすらに夏目の憎悪と怨恨が重ねられていきます。とはいえ、それも絵的な部分ではほぼ存在せず、怪奇漫画というにはショッキング不足。ラストでそれまでとは打って変わっての残虐描写が登場するものの、個人的には「怖い!」と思えるほどのものではありません。

とはいえ、夏目の心情描写は中々生々しい負のパワーに満ちており、それは結局、池川先生ご自身の世間への視線が滲んでいるのでは…と勘繰ってしまいます。


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