Subbacultcha

「サブカルチャー」という括りの下、文学・芸術・漫画・映画等について述べます。

2025年1月31日金曜日

黄島点心『黄色い石』

 

怖さ:☆

造型:☆☆

状況:☆☆☆

黄島点心「黄色い」シリーズ第6弾にして、電子限定本3作目、シリーズ最終作なのか、4作+締めの一文・黄島点心の黄色への執着の理由の様なものを感じさせる様なエッセイ「黄色について」が収録。

アトモスに載ったっきり未収録となっていた「子の心」がようやく収録の運びとなったのは、ファン的に嬉しいところ。「黄色い」シリーズ(以下「黄色」)と違って、本作は明瞭な「怪奇漫画」作品と言えましょう。黄島点心・傑作のひとつ。

個人的に「黄色」の中でも名作の「血に落ちる」、そのセルフオマージュというか、時空を超えた続編となる「せるふふ○ら大成功!」の収録も本単行本の目ぼしいポイントでありますが、コレ、同作家の「おしりおっぱい」「ポンチ野球」に劣らず下劣で酷い・他人が他人の作品にやったら同人誌であろうと怒られるレベルのオマージュを自分でやってしまうので、やっぱ黄島点心はすげえよ…と続けて読んで来てる読者ほど絶句してしまう作品。

表題作的「ライクアローリングストーン」も、ボブ・ディランの同名曲と慣用句「転がる石には苔が生えぬ」(作品内容的には「苔の生すまで」か?)を噛み合わせる黄島点心独特のクレバーさに横っ面を叩かれる様な気持ち良さを感じますが、

何と言っても描き下ろしの「鎖国少女」よ。穿った見方をするならば、黄島点心の見方・生き方を率直に表した作品に思えます。「繋がり過ぎた社会」に対するアンチテーゼ、でも底の部分では「社会的生物を捨て切れぬ自分」…。表面は派手でも、中身は寂しい作品で、心根にクるジワッとしたものが在って、絵的な濃度・密度は他作より薄い様にも思いますが、「黄色」のラスト作品・そして強烈に分断されたひとつの世界の中のふたつの社会を描く次作『マーマーブルブルプラネット』の前段として、とても美しく思いました。



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