Subbacultcha

「サブカルチャー」という括りの下、文学・芸術・漫画・映画等について述べます。

2025年1月29日水曜日

まつざきあけみ『人虫』

 

怖さ:☆☆

造型:☆☆

状況:☆☆☆

短編集、収録4作中個人的に面白いな、と思うのは半分の2作ですが、4作とも異様に扉絵が美しい。とはいえ、その美しさが作品本編中にまでは生かされてるとも言い難く、口惜しいところ。

「ペニー・ピンチング」。読むまで知りませんでしたが、「貧乏ごっこ」、お金がある人がさも貧乏げに振る舞う・その振る舞いを誇ったり楽しんだりする、というものだそう。読み始めにこういう構造の作品だろうな、と思ったらフゥワリ裏切られる好編。

「人虫」。ひょうきんで通っている古沢は、「カースト内における道化の役割を演じている」だけ、その演じるストレスを山中で丑の刻参りじみた事をして発散していた。最中、クラスカーストの役割・見た目そっくりの蟻の様な虫集団を見つけ、名を書いた紙代わりにクラスメイトそれぞれに似た虫を攻撃してみる事にする。オチは割とヤケクソみたいな作品ながら、主人公の日々の暮らしの様子の不気味さ、都合良く現れる不気味な「人虫」なる存在、作品の空気感だけで素晴らしい良作。この1作のために、本書を入手する価値があります。



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