Subbacultcha

「サブカルチャー」という括りの下、文学・芸術・漫画・映画等について述べます。

2025年2月14日金曜日

直野祥子トラウマ漫画全集 毛糸のズボン

怖さ:☆☆☆

造型:☆☆☆

状況:☆☆☆

☆満点作品です!

頭木弘樹・編集協力、まんがゴリラ・蔵書誌より蔵本された、ちくま文庫オリジナルタイトル。阪神大震災時に原稿が焼失・このほどは雑誌からのコピーで造本されたそう。…どの位の方が関わっているのか、お二方+直野先生の名前くらいしか本から分からないのですが、まんがゴリラ氏の年月と金銭と労力を掛けた収集・頭木先生の人脈形成やこの本の企画を思うと、そう得がある訳でも無かろうになんで?と思ってしまうものの、本書を読むと分かりました。ああ、これは後世にきちんと知られねば・残されねばと思われたのだろう、と思ってしまう作品の威力・魅力。

大抵こうした「幻の作家の作品集」は発見・復刻された事自体に価値があり、ちょっと面白く無い作品が入ってたりしそうなもんなのに、本収録作はどれもホラー・怪奇漫画として素晴らしくて驚きました。71-73年に掛けての「なかよし」「フレンド」への掲載作、同年代の怪奇漫画と比べても、あまり血も化け物も出て来ない、のに作中人物の恐怖心をきちんと絵にしてしまっていて、絵が素晴らしい、その上絵だけで無く、情報の伏せ方・心の動き方を丁寧に描くストーリー描写も素晴らしくってもう…。

のであんまりベスト作品的なものが選べない、全部ベストな作品集やんけ、と思ってしまいますが、個人的には「ひも」、果たしてここまでのものを少女誌に載せて少女達に伝わるか…?と思う丁寧な心の描き方・それ故に産まれる深く主観的な絶望が、でもだからこそ、もしかすると「はっきり描かれた意味は分からずとも衝撃を受けた児童」が居たりしたんかな、居たら良いな、と思ったり。良いな、これをもし少女時代に読めてた読者が居たとしたら。

…余談ですが、本単行本は「なかよし」「フレンド」の作品のみ。光文社から出た大人向けめの2冊、全然出て来ないので、今回のがめちゃ売れて復刊第二弾企画になったりせんものか、して欲しいぜ…。


 

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