造型:☆☆☆
状況:☆☆☆
後年新装版が出ますが、収録作は全く一緒、装画のみの変更のため、好きなカバーの方を買いましょう(個人的には、こっちのネッチリとした水彩?が圧倒的な迫力を感じるので、オリジナル版を探すべき)。
天竺浪人先生、94年にデビュー単行本を刊行・一度引退を表明されるも復帰、2023年に新刊、非常に息長く活動されているものの、いわゆる「実用系エロ」、絵柄で引っかからないと特段個人的に触れないタイプの作家…だったため未読でしたが、この作品集はすごい…。
「エロ漫画」というフォーマット、中には長期連載される方もいらっしゃいますが、基本は読み切りの連続・16ページ程度の中にノルマ的に性行為描写を含まなければならない…事で、無理やり流れを作るために、異常展開から性的関係にもつれ込む・ギャグ、コメディ、シュール展開になる事は多く、「シュール」の中に、ヴァイオレンスやホラーが入り混じる事もあまり高い頻度では無いものの、まぁある…位の印象だったのですが、本単行本収録7作はいずれもその「異常展開」が「怪奇漫画」(明瞭にエロ漫画でもあるし、ホラーでは無い)なのですごいです。
巻頭作の「裂け目」は、自分に情欲を寄せる男から影を奪った事をきっかけに存在そのものを奪う女の物語。
表題「澱」は、経済的にも肉体的にも強固な男が、妻と結婚するに辺り、身体の不自由な弟も一緒に家に迎え入れるものの、妻との情事の折に寝室に「弟の幽霊の様なもの」が現れる…というもの。肉体の檻・家の中に作られる物理的な檻・妻によって作られる澱・夫の囚われて来た檻、と軽くフォースミーニング位は重ねられたタイトルの含意が凄まじい。
他もそれぞれ怪奇・恐怖度は少ないものの、相貌失認・樹霊・ドッペルゲンガー・動物霊、と中々にオカルティック。著者の他の本を読まずとも、本作1冊でも是非読んでみてください。
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