Subbacultcha

「サブカルチャー」という括りの下、文学・芸術・漫画・映画等について述べます。

2024年5月13日月曜日

稗田先生(みたいな人)が出て来る漫画


「マッドメン」は細野晴臣によってそのまま曲名として使用され、
「影の街」の、巨大な男のシルエットが町からニョキッと突き出しているシーンは庵野監督によってそのままエヴァの起動シーンにイメージが流用されています。
そんな感じで、「諸星チルドレン」の、敬愛による作中の、明らかな「稗田キャラ」をご紹介。(各タイトルにamazonリンク貼ってます)

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記事作成2014年7月、2024年5月に追記。

山田穣『がらくたストリート(全3巻)

巻数と巻数の発刊間隔が長過ぎて、2巻が出る前も3巻が出る前も「もしかしてこのまま打ち切り・未完か⁉︎」とファンをヤキモキさせたであろう作品。
なんとも不思議な雰囲気の作品で、物凄い計算・描き込み量の割に話は何も書かれていない、という。神様・宇宙人・怪異現象が出てくるけどSFでなく、学生のモヤモヤや男女関係のビミョーな感じが出て来るけど学園モノ・青春ラブコメでなく、少年が小さな冒険をするけどジュヴナイルでなく、大学生が仲間内でおたくウンチクを披露したり皆でアウトドアしたりするけど日常系でなく…。
なんなんだお前は、と怒られそうですが、これを読んで怒りでなく興味を覚えた方はぜひご一読を。
 

で、ここに出てくる稲葉先生が、作中人物が何故か誰も追及しようとしないスコシフシギ現象に一人で真面目に立ち向かっていこうとする様、大好きなギャグ感です。
                ヒルコがどうとか言っちゃってる。

 でも稗田先生がコナンくん的不思議現象超絶巻き込まれ体質なのに対し、稲葉先生はその不思議現象発生の瞬間・現場には立ち会えず、完全に後追い。稗田先生と別タイプの苦労人であるところもまたニヤニヤポイントです。
余談ですが、「がっくり」(て略すらしい)の女の子はともかく可愛らしいので、イイな、と思ったら「ZERRY藤尾」の別名義で描いてたエッチいのも読んでみるとよいと思います。あと、アオハル連載の『昔話のできるまで』はがっくりより大分SF・ラブコメ・青春要素強いのでがっくりでモヤモヤしたらこちらもぜひ。

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ひよどり祥子『死人の声をきくがよい(全11巻)

日野日出志、古賀新一的な往年のホラー漫画の画面の黒さ・グロさと、伊藤潤二、三家本礼、押切蓮介たちがそこにぶち込んで来た追加要素、美少女やギャグ、B級ホラー映画の影響をパロディ的に使用するといった部分とを、上手く自己流にミックス・昇華させているうぐいす祥子先生の連載作品。なお「ひよどり」はこの連載用のペンネームらしい。

この作中の、主人公・純君の友人に、モロ☆なヤツが居ます。
日枝(ひえだ)くん

 直接的な戦闘能力は皆無に等しいものの(まぁこの作品中では誰も持ってないのだけど)
オカルト的な知識と、急場においても冷静さの残る安定感が魅力的なキャラです。
4巻ではバイトして手に入れたという機器を使って霊道を見つける、という良い仕事をしてくれます。

純君と日枝君はオカルト研究会の部員なのですが、この会長がもう素晴らしいクソッタレ。

ピンチを脱したのがさも自分の手柄であるかのようなドヤ顔。

そして稗田君はきっちり女の子を助けてから脱出を図るも、会長は一目散に周りを置いて逃げる。

このひよどり先生のキャラクター造形バランスよ。

霊能アイドル魔子ちゃんとかたけのこ姉妹とか、ひよどり先生はムカつく可愛いキャラを描くのが上手いです。日枝くんの良い人感や純君の巻き込まれ主人公感はもちろんのこと、本来タイトルの意味合いを背負っている早川さんまで、会長の引き立て役のように思えて来ますね…

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弐瓶勉『アバラ(全2巻、新装版は1冊)

弐瓶勉作品は、その作品の共通性からなる壮大な構造や、機械な生物・非生物が絡まり合い作り出される画面の複雑さから、よく「難しい」と評されることが多いですが、『アバラ』は短いこともあって、アニメ化された「シドニア」の次くらいに弐瓶作品の中では分かり易いヤツなんじゃないかと思います。

主人公は圧倒的な戦闘能力を持つ「黒ガウナ」に変身・変態する能力を持ち、化物「白ガウナ」と戦わなくてはならない、という運命を背負わされます。

この漫画の下巻に諸星先生が帯コメントを寄せており、
「時々、自分でもこんな絵を描きたいと思う絵に出会うがことがあるが、弐瓶氏の絵はまさにそういう絵だ。」
と。
それでなのか、以下の「似たキャラ」が出るせいなのか、巻末のスペシャルサンクスに「諸星大二郎」と書かれています。似たキャラはこちら。
名前すら出てきません。
この世界における警察組織「刑兵部省」の構成員。
ちょっと抜けてて事なかれ主義っぽい雰囲気を醸し出しつつも、決めるところは決める、みたいな愛され系後輩キャラ。
この世界で何が起きているのかを掴むため、物語の中心地に向かう途中で、



ヤバそうな人に見つかり、















呆気なく頭に風穴空けて死亡。
弐瓶勉作品の、「あっさり死ぬ感」を体現するかのようなキャラクターでした…。
でもスーツでセンター分け、つったらもう稗田先生ですよこりゃあ。




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界賀邑里滅不途

界ワールド・キーキャラクターのひとり、彷徨い続けるホームレス・一尾さんの怪奇事件譚のひとつ。…の、ほぼモブキャラ。














「地獄崇拝者の集う教会」のおそらくリーダー格らしい、鐵(くろがね)なる男。…まぁリーダー格らしく何かそれっぽい事を言うたりはしますが、彼の存在自体は割とどうでも良く、彼を始めとした登場キャラクターや要素やによって、「生きながらに地獄/死後の世界の様な環境が現出する」ところが本作の見どころと言えましょうや。

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額縁あいこH村へようこそ!

「H村」なる田舎へ越して来たライターのママとA子。
冒頭越して来る前のシーンで、あからさまに不穏なシーンが描かれ、「本作が『因習村』という定型を利用したギャグなのかホラーなのか判別が付かない(どちらかと言えば「…というギャグ」を利用したホラーらしく見える)」、絶妙な温度感の作品。

先生はパチンカスのクズ(ホラー的本筋に一見関わらなそうな)にも関わらず、稗田っぽいビジュアルと台詞で読者に印象を刻むキャラクター。…いや、最終シークエンスで「観測者」みたいな立ち位置に居そうだなコイツ...。



コイツ自体はともかく、本作はギャグ時空なのかホラー時空なのか判別が付かず、一筋縄で行かない感じ。2024年現在1巻が刊行されたばかりですが、気になります。

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...「妖怪ハンター」というタイトル、諸星先生ご自身は編集部に無理矢理付けられたジャンプ感であまり好きじゃないらしいのですが、稗田先生はこんなにも愛されキャラ、なのです。
夢見村にて」ではなんと諸星作品に「BL」という言葉が登場する、といったサプライズもありましたが、益々長寿シリーズとして栄え続け、様々な文化に影響を与え続けて欲しいな、と思うばかりです。
(そういえばビジュアルだけなら、『べアゲルター』やうめざわしゅん「ピンキーさん」にも居たな、昭和期漫画のキザなエリートキャラにも居そうな気はする、極力「潮流っぽいの」を選択的に提示というか記録していきたいもの...)


諸星ミーツ画太郎的な、新世紀というか、世紀末というか、を感じ得るアニメ映画。

久々の諸星短編に、掲載時にすっげぇテンション上がりました
➼キミも綱の引き手の一人なのかもしれない 諸星大二郎『闇綱祭り』

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