Subbacultcha

「サブカルチャー」という括りの下、文学・芸術・漫画・映画等について述べます。

2020年12月31日木曜日

このマンガがすごい2020(ダーク編)



こんちわー。

去年の同記事をコピペしてこの記事を作成しているのですが

>暗いですね、先行きはいつも常に暗い。 と先年は書いていたものの…。

漫画界は華々しいニュースで溢れていましたが、一方でリアルは去年どころでは無いくらい感覚。まぁ言うて自分は在宅勤務、ほぼ引きこもりゆえ暮らし向きが特に変わった訳では無いのですが、だからこそ「たまに遠くに行く」のが結構大事で、でも自分の住んでる地方からはついぞ出ない一年、中々にキツイものがありました。

そんな訳だかこんな訳だか、今年もこのマンガがスゴいを陰湿なヤツが、陰湿な感じで選ぶ。せっまいランキング、やります。

→過去の「このマンガがすごい(ダーク編)」


対象は「2020年中に出版されたマンガ単行本のみ」。

先に言っておきますが、本記事中で挙げるものには、鬼滅・チェンソー・僕ヤバ・青野くんが含まれており、新奇性もクソも無い駄記事です。「知らない面白マイナー新刊マンガを知りたい」といった方には、何の情報価値も無いかもしれません。でも面白かったんだよ。

あと、取り掛かり始めるのが遅かったので、省エネ・画像ほぼ無し構成となっております。記事の見た目としての面白さ無し、と請け合っておきます。

それでも読むぞ!という変な方のみ、どうぞ。

ベスト3以外は、順不同・同列です。

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吾峠呼世晴『鬼滅の刃 23』(完)

イヤァー、良かった。単行本派だったので、Twitterで「未来が…」「転生が…」等の本誌最終回読了コメみたいのが流れてくる度に、感動が減衰してしまうんじゃないか、みたいな心配に駆られてましたが、杞憂。

なんかこう、「めっちゃ面白いよ!」と勧めた友人達が、悉く「ちょっと今から読むには巻数が」「絵が少女漫画っぽくてそそられない」「絵がホラーっぽくて気持ち悪い」等々断ってくれてたのに、アニメ終わりのブームフィーバー辺りから「めっちゃオモロ!ジャンプ本誌買い始めました」「頑張れ炭治郎!」「煉獄さん!」みたいなツイートをし始め、シネッシネッ!!!等と憎しみを拗らせていたのですが、浄化される様なエンディングでした。

ジョジョさながらの「連なる故に人間」、鬼滅ならではの「救いを求めるモノに人かどうかは関係無い」という仏教的な結論。改めて読んでて・最後まで読めて、良かった、と思わされた少年漫画でした。

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藤本タツキ『チェンソーマン 8』

鬼滅と同じ編集の担当、ってんだから恐るべきヒットメーカーですよね。

アニメ化も決まった、そしてこれを打ってる時には既に最終回を迎えてる、チェンソーマン。『斬り介とジョニー 百人斬り』を始め、前作『ファイアパンチ』以上に「タツキ先生が何を読んで来たか」が端々に表れてて、毎巻痺れさせられます。(…特に明言されてないけど、大友克洋・高野文子・松本大洋・林田球・弐瓶勉・つげ義春は絶対履修しててお好きなのだろう、と)

勿論9巻も痺れる描写だらけだったのですが、8巻収録「地獄旅行」「ウェルカムトゥーザヘル」、闇の悪魔の暴れっぷり、何なんだ?恐ろし過ぎる。クローネンバーグ?リンチ?シャイニングの時のスピルバーグ?

「その画面」を作り出してるモノが人の思考を超えたモノなんだろうな、と思わせるルール外の画面作りを観た時「怖い」と感じてしまいますが、でもそれが人間である自分の前に出て来てるという事は作ってるのも「人」な訳で。

五十嵐大介『魔女』からの影響、と公言された70話「摘む」も鮮烈でしたが、とかくあの命の奪い方の表現、異質過ぎる宇宙服。異様な思考の形式に怯えさせられました。

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勝田文『風太郎不戦日記 1』

山田風太郎の戦中日記『戦中派不戦日記』コミカライズ。

山田風太郎、『甲賀忍法帖』を始めとした忍法帖モノは幾つか読んでましたが随筆までは読んでおらず、「エエッこんな面白いんですか山田風太郎のエッセイって!!??」と思わず倒置法で声を上げてしまいました。

基本的に、大勢が決している時に何もしないことは「大勢をのさばらせるのに反対しないこと」、即ち「大勢側を支持する」ことを意味するのですが、本作は戦中において「何も選ばない事で大勢へのカウンターとして成立している山田風太郎の生き方」を示しているように思いました。

俺あ、人様のウンコでこんなに感動したのはへうげものの最終巻以来だよ。

エエッもう出てたんですか2巻って買わにゃ!!??

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諸星大二郎『美少女を食べる』

諸星大二郎劇場第3集。

幻想的な感覚が強いシリーズだな、と思っていましたが、本作は異種姦・少年愛・人肉食、と全般悪趣味な要素強め…なのに、何故か上質なモダンホラー小説の様に品がイイ!

臓物やら性器やらがまろび出してるにも拘らず、諸星大二郎の絵柄が生臭さを感じさせないまま、異常な状況が描かれる。浦沢先生が「諸星大二郎の女性はエロティック」と評してましたが、全体的に的を射た事を仰ってたと思うけどそこにだけは異論を唱えたい。「諸星大二郎の絵はエロティックで無いからこそ、民話・神話的触感を得られる」と思うのです。本作はエロティックな感覚が絵柄に無いからこそ、面白く読める作品集でした。

なお、浦沢直樹ホストのテレビ番組「漫勉neo」に諸星先生が出演した際に執筆していたのが、掲載作の「俺が増える」です。

…諸星先生と同じくキャリアの長い怪奇漫画家、大好きではあるのですが、近年どうも手癖っぽい作品が多くなって来てあまり買いたくなくなって来てる…のですが、諸星大二郎、進化は言い過ぎかもしれませんが常に「新しい新作」が出続けるの、おかしくないですか?画業、2020年で41周年ですよ!?…近くに来た時に巡回展行こうと思います。楽しみ。

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藤田和日郎『双亡亭壊すべし 19』
毎年挙げてる気がしますが、毎年最高潮なんで仕方がない。
毎年言ってる気がしますが「伽倻子の家とか紙葉の家とかマリアの棲む家みたいな家を、物理的実力で攻略する」みたいな話。
が、とても重要な要素として「攻略メインメンバーの超人達の超人的実力によってあぶり出される凧葉・緑朗の普通さ、そして異常な状況において普通であろうとすることの尊さ」が前提としてあります。「自分は普通」という自認の読者にこそ響く物語、なのです。…これも毎年言ってる気がするな…。

本巻においては、メインメンバーは攻略を急ぐあまり人間性を捨てがち故読者のヘイトを集めがちであろう中で、特に、別に彼のことが好きな人は居ないんじゃないかなー、と思わせる「電磁エネルギーで霊的存在を破壊するアウグスト博士」(ニコラ・テスラを想起させる)キャラクターにスポットライトの当たる巻。
そのエリート志向・思考故切り捨ててしまった娘から、人生の負の部分が反射される。
一人(そして彼女に関わる他者)の人生を歪めてしまった行いからのしっぺ返しにどの様に向き合うか。

「自身がどんな思考・意図を持ったとしても、一個体としての生体は生存しようとしている」
そこに重ねて
「何かをやりたいと思う私がまだ生きている」
即ち、
生物としての生存本能と、人間としての生存欲求が重なった時、「生きる意味」は罪の意識を凌駕する、と。

人間は生きてるだけ(「生きる」ことこそ)で罪を犯し続けると、キリストも親鸞も述べています。「しんどさから自死を選んでしまう」という若干の時勢の意志を感じていた自分に、あまりにもアウグストの言葉は響いてしまいます。
生きるのが正解とは言わないけれど、アウグストは「今肉が食いたい」。「そして…」のあとはご自身でお読みください。滅茶苦茶しょうもないです。言い訳・その場しのぎに過ぎません。けれどもある種の言葉は、その「しょうもなさ」によって威力を増す、と自分は思います。

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椎名うみ『青野くんに触りたいから死にたい 7』
4巻辺りで他人に勧められて、ちょっと「読みたいなー」という気持ちになってたものの、「言うて彼氏が死んで幽霊になって歪な恋愛関係、みたいなコメが強いラブコメっしょー?」みたいな浅い憶測で中々手が出なかった作品。いや、これは恐ろしい作品です。
「スイス・アーミー・マン」が一見バカ映画の足取りを見せながら実は神話であることを観客に見せつけたように、「青野くん」はバカラブコメ漫画的足取りを見せながら、「愛」「人間の定義」の意味を読者と共に探ろうとします。

「主人公の優里ちゃんが何故異常な状況の青野くんに依存しなくてはならなかったか」がここまでの巻で描かれます。それは姉・母からのDVによって形成された人格だったから、という前提がひとつ。そして、「青野くん自身が願っていなくても死者が現世に残っているという歪さから副次的に生まれた悪霊としての青野くん」という二次被害的DV構造。「恵まれた家庭環境で無かったために恋人の異常な行動を許容してしまう」というエグい構造なのですが、7巻では「特殊な状況下の青野くんみたいな赤の他人が出現したら、主人公はどう対応する?」というドSな問いかけ。
許容は「意志」なのか、成り行きに任せた「めんどくささから来る許容」なのか。
一見特殊な関係性のカップルを描く特殊漫画の様で、その実、ただ愛するということ・ただ怖いものを描く作品。

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・奈央晃徳、山川直輝 『100万の命の上に俺は立っている 10』
6巻から続く「麻薬戦争」編、集結。

アニメ化もした人気作。現時点での最新刊は11巻です。
「ぼっちこじらせ合理性追求主人公が同級生の美少女と共に異世界に召喚されミッションをこなせなければ死亡」…若干なろう系テンプレの様な大筋で、アニメ1話目も観てる途中で共感性羞恥を覚えて視聴をやめてしまったのですが、ミッションが「強敵を倒す」といういかにもRPGっぽい序盤は、あんまり面白くない様に思います。

ミッションが現実の諸問題への解決を探り始めてからが、この漫画が抜群に面白くなってくるところ。
この「麻薬戦争」編、実際の南米麻薬戦争の構造をそのまま取り込んでおり、ミッション自体は「当該国の麻薬の常用者を3%以下にしろ」というもの。開始時は6.1%。「根絶」でないところが生々しい。

政府・警察・マフィア・市民がそれぞれ麻薬にどの様に相対しているか、またどんな経路で流布していくか、という構造の解説がとても面白いのですが、一応勇者としての能力を持っているとはいえ「たった6人で構造に挑む構図」がめちゃくちゃ面白いのです。
いや、まぁなろう系と言われる異世界転生ものの多くが、たった1人で世界に挑んでいくものが多いと思うんですが、この「世界」が、100万の〜はとにかく都合が良くなく。

勇者パワーである敵をぶっ殺して終わり、では無く、麻薬に代わる産業を考え、常用者に職を与え、マフィアの面子を立てつつ、政府に訴えて法律を変え…。

いやー、面白かった。
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…って感じの7作品でした。
では以下ベストな三作です。

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3位!

・うめざわしゅん『ダーウィン事変 1』

…うめざわ先生の新連載が始まったのは何となく認識してたのですが、読んでいなかったため、本屋に並んでるのを見て、「ドエエエエッ!?うめざわしゅんの新刊じゃんすか!!」と大喜びして買いました。

デビュー単行本から異常な世界観を見事にバンバン連発されてるうめざわ先生ですが、前作『えれほん』の抽象思考の絶品さったら。

本作は、人間とチンパンジーの混血・ヒューマンジーのチャーリーが社会に落とす波紋について描かれる作品。

差別、少数者、炎上、ベジタリアン、アニマルライツ、権利、力の行使。人間でもチンパンジーでも無い存在が投げかける、人間社会の歪さ。

といっても小難しいノリでは無く、それがハリウッド映画の様な軽快なBGMの下で展開されます。会話のキャッチボールもとてもバタ臭くて楽しい。本巻ではチャーリーをテロ組織「動物解放同盟(ALA)」の象徴として祭り上げようと組織内部隊が実力行使に出るも、チャーリー自らによって作戦が叩き潰されるところまで。

作品そのものは上述した様な問題点をチャーリーによって浮き彫りにすることに成功していて面白いのですが、一方でALAは、実在するアニマルライツ団体「ALF」を明らかに参照していつつも、ALFは基本方針として「人も動物も傷つけてはならない」を掲げており、この漫画自体が彼らの印象を歪めてしまう可能性もあります。そこら辺は読者に上手く読み分けて欲しい…(けど作品人気が高まれば高まるほど、ウーン…)

Wikipedia - 動物解放戦線

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第2位!

・桜井のりお『僕の心のヤバイやつ 3』

ヤバイ!!!!!!!

…ヤバかったです。瞬間最大風速とか、リアルタイム感とか、知的充足感とか、映像美・表現美に圧倒されるとか、そういうのは抜きにして、「今年一番心が揺さぶられたフィクション」でした。

オタっぽい根暗な少年と、読モになるほどの美少女の恋愛劇。…いやめっちゃ都合いーじゃん、エロ漫画かよ、という下地ながら、二人の物事に対するリアクション・距離の詰め方があまりに絶妙で。桜井のりお先生、『みつどもえ』も、同時期連載だった『ロロッロ』(既読1巻相当辺りまで)も、そんなにシックリ来なかったのですが、こんなに人心の機微を描くのが上手い作家なんです?読む度にあまりに自分でも抑え切れぬ変な情動の揺れ方をしてしまいます。

市川のジャージ着る山田とか市川母・姉に評価される山田とか彼氏いない宣言を流れで市川にさせられる山田とか何故か熱病でうなされてたら自室に居る山田とか、で極め付けに仲直りのハグってお前、アーッ、苦しい苦しい胸が苦しい、僕ヤバ世界の石になって二人を見守る石になりたいィーーー!!!!(確定してるけど幸せになって欲しい)

無論羨ましい関係性の二人ではあるのですが、別に市川になりたいともこんな学生時代を送りたかったとも思いません、ただただ幸せになって欲しい。

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第1位!!

・KAITO『青のフラッグ 8』(完)

「ホラー漫画が好きィ!」とか言いながら、1位2位が恋愛漫画で埋まってしまった。

…一応「恋愛」から物語が始まるものの、本作は恋愛漫画と形容するのは正しく無く、強いて言えば「人間漫画」でしょうか。

たとえば鬼滅、一部では乳柱などと揶揄される甘露寺さんですが、彼女のそうした乳の大きさだったり「結婚相手としての正しさ」を偽装することで求婚されたり、という「他者の貼り付けた属性に従って生きていく息苦しさ」を跳ね除け、「甘露寺さん自身がなりたい自分で居ること」を認めてくれたお館様・鬼殺隊だったからこそ、彼女はそこに居たいと感じた、という14巻終盤のシーン、とてもグッと来てしまったのですが(…まぁ一歩引いてみればカルト教団のやり口ではあるのですが)、

なりたい自分と他者の望む自分、どちらを優先すべきか、を恋愛と青春を通して必死で考え抜くのがこの『青のフラッグ』という作品です。

そもそも、この「なりたい」というグニャグニャしたものを模索するのが青春だとは思うのですが、それはいわゆる「自分探し」であって、そこに本質的に他者は介在していません。この漫画も当初は「自分探し」から出発しますが、物語を進めていくことで主人公は自分が自分だけで出来ている訳でないことを次々と知っていきます。

「友情」「恋愛」、即ち「他者との関係を突き詰めて考えること」、特に物理的・心理的に「他者を自分の中に迎え入れること」、恋愛、こんなにもドラマチックなものか、と心が震えました。

言ってしまえば、内輪のグジャグジャ青春恋愛劇、スポーツや音楽や絵を描いたりするでも異世界に行ったり異能手に入れたりするでも変わった経験するでも無く、学校から大きく物語が外へはみ出したりするでも無く、「身近な人間トラブルにちゃんと向き合う」だけなのですが、中々この「ちゃんと」が出来ないからこそ、この主人公達の向き合い方がとてもとても、尊いのです。

ちゃんと向き合った結果から導き出されたエンディングが、ようやく少数者・弱者に対して少しずつ目を向ける様になって来た現代日本に、先触れの角笛の様に、強く自分の心には響きました。とても力強く、優しい。

KAITO先生、『クロスマネジ』も『バディストライク』も、これから面白くなるぞ!という所で打ち切りみたいにボツンと終わる(終わらされる)感じだったので、ようやく「最後」まで読める作品が出て来て、そこも嬉しさポイントでした。

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以下次点。

・斎藤潤一郎 / 死都調布 南米紀行…もう全然調布じゃねーし!改めて、ボコボコ人死ぬし無闇に女性の裸が出て来るのに、ラテンアメリカ文学読んでる様な不思議な感覚でした。

・とよ田みのる / 金剛寺さんはめんどくさい7、イマジン

・福島聡 / バララッシュ3

・江野スミ / 亜獣譚8

…いーい終わり方だった

・鈴木央 / 七つの大罪41…匂わせながらイマイチ本編と関わって来ない聖杯伝説関連は?と思ってたらまさかそんな回収の仕方を。最後のエピソードとしてどうかは置いといて、その話をそこに持って来たか!とビックリしました

・山田芳裕 / 望郷太郎3…「全てが一度無に帰った世界」でリフレインする、「貨幣経済とは何か」という問い。何もないからこそその問いが響くの、痺れる

・田口翔太郎 / 裏バイト 逃亡禁止2…この作家頭おかしいよ。素晴らしい。クソデカ水槽の概念、怖し。

・清野とおる / 東京怪奇酒…「怪奇酒」という概念の発明、異能。おめでとうございます。

・浦部はいむ / 高校生をもう一度、あの人は血を求めてしまう1…真反対の様な感覚の作品が同時発売。けれども、どんなに血がブシュブシュ出て来る作品でも作者の優しさが滲み出てしまう。

・九井諒子 / ダンジョン飯9…人間関係が広がっていくことで、ライオスパーティの異常さが際立って来る。けど、ライオス達がそうした政治を気にせず我が道を行く姿は、どんどん好きになってしまう。

・川勝徳重編 / 現代漫画恐怖と奇想…積んでる、でも絶対面白い

・浄土るる短編集地獄色、丸尾末広/天國、界賀邑里/かえらずの雨6…買えてない、でも絶対面白い(…かえらずの雨ェ)



…とかく漫画、鬼滅が異様に目立つ年でしたね。不思議なんですが、売り上げランキングが鬼滅で埋め尽くされる、までは納得出来るけど、最初巻・最終巻を除く各巻の売れ行きにバラツキが出るのはどういうこと?たとえば炎柱推しで8巻だけ紙で持ってる、みたいな、そういうこと?

自分の様な、「いやーそんな持っときたい感じの漫画じゃねーなー」と判断したらそこでそれまでの既刊をまとめて売っ払ってしまうかそれとも最終巻まで買うか、な人間にとっては不思議だなぁという売り上げランキングでした。

…まぁそのせいで鬼滅、コミックスが最初に出たらバッと買った割に、「まぁどんな形でも、最後まで読めれば良いかな…」と4巻時点辺りで売り払って電子に切り替えようとしたがために、持ってる単行本の内1・2巻は再版帯欠、それ以外は全巻初版帯付、みたいな愚かさを体現したセットを持っているのですが…(ヤフオクなんかで見る限り、初版帯付全巻セットなどはちょっとした家賃を賄えそう)

とりあえず「一番売れた」事により読者層も幅広く、中にはホントに「鬼(無残)を殺すために仲間全部で頑張って頑張りが報われた話」位の雑な読感しか得られない人間が、少数派・弱者に対して「〜、お前は生きていてはいけない存在だ」のコマを送りつけるゴミみたいなSNS仕草をアチコチで見てしまって、作品そのものに嫌悪感を抱きかけましたが、そこに対する憎しみ・怒りを浄化する様な気持ちの良いエンディングで。「ちゃんと中身を読めよ」という強い負の感情と、でもこの漫画が一番売れてる漫画で良かったというちょっぴりの救いの様な感覚と。

思いつめたら貫き通そう、半端に思って悔やんだりしない様にしよう、と思った年でした。…まぁ多分、毎年の様に抱えてる思いですが…。皆さまもこんなご時世、いつおっ死ぬか分かりません、悔い無き様生き抜いていきましょう。

ではでは、よいお年を。

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