Subbacultcha
「サブカルチャー」という括りの下、文学・芸術・漫画・映画等について述べます。
2018年8月1日水曜日
黄島点心『黄色い円盤』
黄島点心『黄色い円盤』
怖さ:☆☆
造型:☆☆☆
状況:☆☆☆☆
☆満点作品です!
「出ました!」
とは日野日出志『愛しのモンスター』の名台詞であるのは周知の事実ですが、
「黄色い円盤が出ました!」
前作『黄色い悪夢』に比べると、収録作品によりホラー度は落ちるものの、トンデモ具合、またその作品配置による「マンガ単行本としての精度」は向上しています。
まず、描き下ろしの「intro」「outro」により、本自体を一つの作品として成立させ、「アーッ!読んだーッ!」という美味しいものを沢山食べた時に似た読了感を残してくれますが、
「満腹感」を与えてくれるのは何と言ってもイントロの次の「円盤」・アウトロの前の「盲脳」の重量具合によるものでしょう。その、イントロ・アウトロというバンズに、円盤・盲脳という肉汁滴る極厚パテの前に、残りの三作品は印象が薄れてしまうものの、ハンバーガーはピクルス・レタス・トマト無しには成立しない。
超重量級マンガハンバーガー、『黄色い円盤』。
「円盤」は地球を覆う巨大なアカシックレコードが出現、地球を真っ二つに。その再生が終わる前にディスクを取り替えろ!という書いててもホントによく分かんない状況なんだけど、ともかくその物語のスケールに圧倒されます。それを救う手立ての卑近さが、読んでる人の気持ちを訳分かんなくさせていく。途中博士が謎論理で解説してくれるものの、よく分からず、訳分かんないまま状況はどんどん進んで行くので、「ああ円盤だなあ、ああ黄島点心だなあ」などと納得していってしまう。
パワー。
次の「プラスマイナスゼロ」、丸っと黄島点心ファンへのサービス回というか思い出レイプ回みたいなヤツで、収録作品中でも屈指のバカバカしさ。
断面図!エロい!ボコンボコン!
以上です。
「宝毛と黒子毛」も中々に嬉しくなるカメオ出演。
屋根裏の散歩者ライクな何者でも無い主人公の住む隣の部屋に越して来た平凡な主婦。
その娘と息子は、どう見ても毛だった。
…川端康成の「雪国」を想い起す様な、素敵な一文ですね。ハイ。
毛は何故毛なのか?彼らは如何に暮らしていくのか?黄島流のパワー溢るる答えが、登場キャラクター達の命運を強烈にかき回していきます。
「赤い飛沫」。収録作唯一の、「アトモス」連載からの参加。
真っ当、という形容は点心先生には似合いませんが、この本の中では最も真っ当なホラー作品。
前作に収録された「鉋屑」が、漫画だけでなくおそらく世界中の全ての創作物中の「鉋ホラー」におけるベスト1作品であることが間違いない様に、
「赤い飛沫」も「スイカ割りホラー」世界クラスのトップ作品であることは間違いないものかと思います。
「盲脳」。「脳味噌は10%ほどしか使われてない、ということは使われてない腸・盲腸と同じ様な『盲脳』なので、俺にくれ!」というヤバい脳味噌くりぬき事件。
それが何故か表紙の大仏みたいなものに繋がってしまうのですが、なんやこの超級理論!訳が分からないとか理論が破綻しているとか、そういうものを力で踏み潰す。正に「黄島点心の漫画」。
しかとその不条理を目に焼き付け、己が空を知れ、人よ!
という、「最初と最後が特に力強くてヤバい」作品配置になっているのですが、
それぞれの作品で超級理論をブチかます二大博士による対談まで付いていて、頼んでないのにハンバーガーにもう一枚肉が挟んでありました。ありがとうございます。
前作『黄色い円盤』の感想文に「何故か黄島点心先生は描けば描くほどそのアイデアの狂いっぷりが増していく」と書いていましたが、それを証明する「黄色」2作目でした。
読んだァーッお腹いっぱい!という満足感、夏休み気分モリモリ、ご機嫌な1冊!!!
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