Subbacultcha

「サブカルチャー」という括りの下、文学・芸術・漫画・映画等について述べます。

2014年7月10日木曜日

BL作家がBLっ気を極限まで抑えて描く時代もの『ひらひら 国芳一門浮世譚』



オッスオッス!

ゲイ漫画はたまに読むことがあるのですが、BLは全く読まないため、「岡田屋鉄三?BLはちょっとなぁ…」と読まず嫌いで敬遠して来た『ひらひら 国芳一門浮世譚』が非常に面白く、自分の見る目の無さを恥じ入るばかり。


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歌川国芳を筆頭とする、「歌川一家」に、身投げしようとしていた武家の人間・伝八郎が仲間入り。
元武家であり、何かのきっかけで身投げしようとしていた重い過去を背負った「外部の人間」である伝八郎の視点から、絵のこと以外はほとんどダメ人間、でも情感たっぷり、人情味溢れる集団・歌川一派を描く作品です。

実在した人間を題材として、作者独自の視点から歴史を描こうとする作品(まぁ言ってしまえば全ての時代ものがそうかもしれませんが)が、大好きなんですが、たとえば、秀吉が信長を斬り殺す『へうげもの』、実は恐竜は絶滅せず恐竜人間として歴史の裏で暗躍し続けていた『ジャバウォッキー』、ラスプーチンは日本に渡って来て明治政変の裏側に居た『ラスプーチンが来た』といった作品たちのような斬新な改変はないものの、それらの作品中にある、作者の独自性からのキャラクターのエネルギッシュな雰囲気は共通するところがありました。

たとえば、江戸湾に鯨が迷い込んで来て、一家総出で鯨見物に出かけるシーンがあるのですが、皆がでっけぇでっけぇ!と大喜びし、国芳も大喜びでそれを絵にかきとりつつ、
「しかし見ろよ、あの眼 かあいらしーなー」


と呟きます。
で、今も残る「宮本武蔵の鯨退治」がデーンと掲載されるのですが、そのダイナミックな構図に比して、鯨の眼の可愛らしいこと。実際にそんな感想を持ちながら描かれた作品なのか?と納得させられるだけのリアル感のあるエピソードです。

他にも江戸風俗・暮らしを感じさせるエピソードがちょいちょい入ってきつつ、伝八郎の謎めいた過去もちょっとずつ明らかになり、と単なる「江戸人情もの」で終わらせない佳作。

「キャラクターの人間らしさ」が、やはりこの作品をよいものへと押し上げているのですが、これはやはり作者がBL作家ゆえなのかなあ、と少しばかり思いました。一方で強固なエロ漫画家キャリアを有する「水沢悦子」さんや「佐伯俊」さんの漫画、2014 年現在のところで、あまり胸に来るものは無いのですが、でも面白い。エロ漫画の方もエロい。これはつまり、エロく魅せようとした・見せようとした努力がつきつまって、ちょっとした仕草だったり、表情や、些細な言葉のやりとりを「どう組み合わせれば読者に魅力的に見えるか」がある程度見えているためではないか、と思うのです。故にBL作家として強固なキャリアを持つ岡田屋さんの描く人間が、魅力的でない筈が無い。
岡田屋さんの人間描写の巧みさが本作で非常に気になってしまったため、他のホモ本、ゲフンゲフン失敬、他の著作も読んでみます。

どうやら「ひらひら」の続編も現在連載中(ぽこぽこより『むつのはな』)のようですし、続き楽しみ!
あんまり関係無いかもだけど、杉浦日向子の『百日紅』の映画化もすっげぇ楽しみ!!





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