Subbacultcha

「サブカルチャー」という括りの下、文学・芸術・漫画・映画等について述べます。

2016年10月27日木曜日

野口千里『怪奇千里眼』


野口千里『怪奇千里眼』
怖さ:☆☆
造型:☆☆☆
状況:☆


現在は実録系・レディース系雑誌にのみたまに掲載される、野口千里さんのホラー単行本。

ホラーマンガにおける描写力とは、単純な「絵の巧さ」ではありません。
「怖ければ・気持ち悪ければ勝ち」なので、却って小綺麗な少女マンガ絵やシンプルにデフォルメの効いたマンガオブマンガ絵だと威力が無くなって、ホラー漫画的にはちょっと、と敬遠されることも。

そうした意味で、野口千里さんの絵は大変失礼ながら、あまり上手くないけども、ホラー漫画的である、と言えます。

羽生生純の絵を、少しスラッとさせたような情感溢れる独特の線と、実録系ホラーから唐突に現れる不条理ホラーエンドは、この人にしか出せない変な魅力に満ち溢れています。

惜しむらくは、ホラー的盛り上がりどころがラスト1ヶ所しかほぼ無いという点と、その盛り上がりがイマイチ盛り上がりに欠ける点。ちょっと威力が足らず、不条理SF・ギャグっぽくなっている作品がほとんど。これが傑作、という短編も、このほぼ唯一である単行本『怪奇千里眼』の中にはなし。

とはいえ、ヒッチコックよろしくただただカラスに命を狙われる「狙う眼」、オチも酷いところながら追い詰められていく人間の描き方が生々しい「ストレス」、人間大津波のひとこと「龍灯の海」など、ホラー漫画好きなら引っ掛かるであろう作品はいくつかあるので、手に入れにくい所ではありますが、ぜひ一読を。

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