となりそうしち、伊藤潤二『こっちをみてる。』

怖さ:☆☆

造型:☆☆☆

状況:☆☆

東雅夫・編シリーズ「怪談えほん」に伊藤潤二が登場。

…ホラー漫画について述べたいブログ記事では無いのか、と思いつつも、伊藤潤二だしまぁええやろ、の精神です。

著者は「怪談えほんコンテスト大賞」に選ばれた作家。

相貌失認...の逆、目と目と口を見出し、何にでも顔を見てしまう、というのを「パレイドリア現象」と心理学用語で呼ぶそうなのですが、これはあくまで人間が普遍的に持つ能力、の筈ながら、これが疾患的になり、実体現象として現れ...という恐怖絵本。

あまりに伊藤潤二の描き出す「顔が過剰になっていく進行具合」「単純な顔の絵の上手さ」「厭さ」が強烈でめちゃくちゃ魅力的な絵本なのですが、個人的には逆に絵の力が強過ぎる・絵で保っている絵本、という印象で、他の怪談えほんと比べても、これが大賞受賞作品...？というちょっと力の弱さを感じてしまいました。伊藤潤二漫画と比べるのも酷ですが、「要素が過剰になっていく事で不条理が恐怖に変わる」というシンプルな構造にしてそのオチは...とちょっとシュン、と。すみません。

とはいえとはいえ、画集の類でも見れない様な美麗細密伊藤潤二カラー絵が続く、というだけでもう、ファンには買いの本、であります。