Subbacultcha

「サブカルチャー」という括りの下、文学・芸術・漫画・映画等について述べます。

2016年11月22日火曜日

二ノ瀬泰徳『人間失格 壊』


二ノ瀬泰徳『人間失格 壊』
怖さ:☆☆
造型:☆☆☆
状況:☆☆




太宰治『人間失格』を、壊しまくり、ホラー漫画的な何かへ作り替えてしまった、凄まじいコミカライズ。

生育的な原因からの人間不信のあまり、「人間が恐ろしい」葉蔵は、常に自分に嘘を吐き、仮面を被ることで「お調子者」として何とか人間社会を生きて来た。
が、あるきっかけでそれが破綻した所から、彼の「人間らしい生き方」は行き詰まりを見せていく…。

主人公が絶望した時の心象風景があまりに恐ろしげに描かれており、人間失格がホラーになってしまいました。
多分それは作者の人間への不信感・恐怖感や、二次元(アニメ・漫画)への心酔、が過分に反映されているからかなぁ、と。一応は原作付の漫画の筈なのですが、商業誌なのにあまりに「作品に作者の思いが塗り込められている」感じが、好きな人にはたまらん作風へとなっているのです。

ただ、威力・迫力があり、主人公の絶望・諦念がよくよく伝わって来るものの、「不自然に展開がエロい」こと、「キャラクターの行動にリアリティが無く、動きが唐突に見える」ことでちょっと魅力を失ってしまっているかなー、と思いました。

併録の「病みうさぎ」なる短編を読んで「なるほど」と思ったのですが、
この作者「触手大好き過ぎる病」のようです。だから、恐怖よりもエロが先行する雰囲気だったのか!こっちを見るとなるほどこれがやりたかったのね、と納得出来る反面、よくこの作者に人間失格描かしたな、という編集の英断に拍手したくなります。

ただ、自分がいくつか読んだ『人間失格』コミカライズ、的な作品の中では、これを一番推したい。


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