Subbacultcha

「サブカルチャー」という括りの下、文学・芸術・漫画・映画等について述べます。

2016年11月6日日曜日

日菜さちこ『死体あそび』


日菜さち子『死体あそび』
怖さ:☆☆☆
造型:☆☆☆
状況:☆☆☆



☆満点作品です!
過去に一度ブログのネタにしてますが、改めて。

ハロウィン少女コミックは、ホラーM・サスペリア等に比べると、どうも「そこで終わった作家」が多い印象で、現在でも古書価が付いていない本が多いような。
そんな中で、ここで単行本が1冊しか出ていないのに、いや1冊しかないからこそ、特筆すべき作家がひとり。

日菜さちこ。
「シリーズ 危険な子供たち」と銘打っている様に、こちらの単行本中の4作品中、ややモンスターパニック寄りの作品「真夏の悪魔」を除くと4編が「危険な子供」をテーマとした作品。

何がイイって、「眼」がイイんですよ。
愛(性欲・所有欲)とか友情とかに固執するあまり、思い詰めてしまうサイコな子どもたち。
伊藤潤二さんとか日野日出志さんとかって、「自身の臆病さから来る、自分が見たくないものを取り出す」→「優しい人間」というイメージの作家なのですが、多分、本当に憶測でしかない多分なのですが、日菜さちこさんは「自分の中のイヤなものを切り分ける」→「性格悪い人」なんじゃないかなー、と思わせるくらい、ヤバいヤツらが目白押しな短編集です。

ただ、そいつらのヤバさが、「思い余って何をして来るか分からない」ヤバさである所に、これが「ホラー」となるのです。
子ども間における独裁的集団を作り上げる・仮面を被ることで何でも出来る様になる・相手を独占したいあまり傷口を噛み続ける・好き過ぎて呪をかけて自分以外の人間を遠ざける、等々…。

勿論大人でも何をして来るか分からんヤツは恐ろしいのですが、そこに更に子どもゆえの「未成熟」という属性を加えた時に、コトは更に方向性を失って予測不能な事態を招きます。
恐ろしいのですが、それを更に「サイコな子どもが行うこと」として描写・操作出来る日菜先生の恐ろしさよ…。
90年代の末にこの単行本が出たっきり、幾つかの未収録作品も90年代前後までのもののみ。
2010年を越えた今、この作家がどんなものを描くのか、非常に見てみたいものです。


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