Subbacultcha

「サブカルチャー」という括りの下、文学・芸術・漫画・映画等について述べます。

2016年11月30日水曜日

早見純『純のはらわた』

早見純『純のはらわた』

怖さ:☆☆
造型:☆☆☆
状況:☆☆☆



早見純、血みどろ怪奇作品集。

エロスは鳴りを潜め、早見先生が持てる力をグロ・狂気・怪奇にハンドルを切る。装丁、扉絵などにもガシガシ不穏な空気が滲み出ています。
早見先生の絵、女の子などは神聖ささえ感じさせる美しさがあるのですが、それを思いっきり破壊することで、美と醜・生と死といった対照が、読者に迫ってきます。
本作でも幾人もの女の子が、読者の、早見先生の怪奇探求の欲望のために殺されていく。

惜しむらくは早見純漫画とエロは切っても切れない相関関係にあること。
「汚いものを描くことで、そこに美しさを見出す」というのが早見純漫画の最大ポイントだと思うのです。

故に
異様な人面疽譚「人面疽狩り」、
正体の分からぬキラー友情記「久美が泣いている」
など良作まみれではあるのですが、何かが足りない!ちょっとドラマが足りない!怖さが足りない!…怪奇作品集とする為に抜かれた、エロスが足りない。
早見純漫画の怖さは、化け物やスプラッタでは無く、「思いつめた人間の何をやるか分からない爆弾っぷり」だと思うのです。

この短編集はだからこそ、「怪奇」。
恐怖マンガではなく、「怪奇」。
早見純の頭の中を満たす奇怪な者たちが蠢く血みどろな世界に、なんかエロいのじゃないんだよなー。グロいの、スゴイのが見たいんだよ、俺はー。て方なら確実にニヤニヤしながら読める本のはず。


…早見先生、それサンタクロースじゃなくて、なまはげでは…?アッパー暗黒童話「暗闇のサンタ」より。

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