Subbacultcha

「サブカルチャー」という括りの下、文学・芸術・漫画・映画等について述べます。

2016年11月25日金曜日

諸星義影(諸星大二郎)「現代間引考」

諸星義影(諸星大二郎)「現代間引考」
怖さ:☆☆
造型:☆
状況:☆☆☆


COM1971年3月号、諸星大二郎単行本未収録作品。

デビュー作に近い初期作品ですが、奇妙な状況も無ければ、奇妙な物体も現れません。

が、そこには「悲惨な状況」が存在する。

どこの誰かも分からぬ相手の子どもを孕んだ娘。
どうやら、それを上手く説明することも出来ない知的障害者のようです。

激昂する父親。
それをやんわりと諌める母親。
貧しい家庭、入院費用すら出せぬような。
娘の真の味方は弟だけのようですが、彼はまだ小学生にもならぬような年。

「てめえがかってにつくったもんだ てめえでなんとかしてこい」と言い放ち、父親は娘を家の外へ叩き出す。

娘は誰かに頼る・助けを求める能力も無く彷徨い歩いた結果、「河原で子どもを産むことになる」。
ただ「それだけ」の話。

厳密に言えばホラーかどうか、という作品です。が「不条理」と「恐怖」こそがホラーの要。
とすれば、この禁忌と生々しさだけで成立する、諸星作品の奇妙な造形などは全く見られぬ、ただただ闇の中に産み落とされた育ってなかった赤子の様な「コレ」は、確かにホラー漫画と言えましょう。

とはいえ、これは「ただそれだけ」の物語。救いもユーモアもなく、神仏も妖怪も悪魔もいない、「どうしようもない話」なのです。

ただ俺はこのCOMを開く度、憔悴した娘の目が、無性に惹きつけられて苦しくて、俺の好きな諸星大二郎作品とは違うこの異質な空しさに、負のショックを受けるのです。







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