Subbacultcha

「サブカルチャー」という括りの下、文学・芸術・漫画・映画等について述べます。

2016年11月2日水曜日

森由岐子『魔怪わらべの唄(魔怪わらべ恐怖の家)』




森由岐子『魔怪わらべの唄(魔怪わらべ恐怖の家)』
怖さ:☆
造型:☆☆
状況:☆☆☆




「ホラー的魅力には大いに欠けるマンガである」と先に述べておきます。
だって怖くねーんだもん!恐ろしい顔の子どもは出て来るけど、それ以上のものは特にでねーし!

唐沢俊一が出版した『森由岐子の世界』は、本としての出来はともかくとしても、この作品・森由岐子を発掘・再発見したことにおいては多大な感謝を覚えます。

まともに「編集者が居ない」ことで、作家それぞれの能力任せになるのが、芸術的方向へ昇華したのが「ガロ系」ならば、ギャグ・ホラー方向へ昇華したのが「ひばり系」、その黄金定型たる作品がこの「魔怪わらべ」でしょう。

新興宗教の勧誘員の女の子(斬新過ぎるヒロイン像)が勧誘に訪れた家。要らない、と家人の女性が言うにもかかわらず、無理やり居座り、説法を続けること1時間、尿意を感じたヒロインは、トイレを貸せ、と要求。家人は、この家にはトイレが無いので他で借りてくれ、と伝えるものの、我慢出来ないから、との一点張りで女の子は家探しを始める。

「ない!ない!ない!…この家にはトイレがない!!」

まぁ確かに不思議なんだけど、最初から無いつってんだろ!

「生まれてから、あんなに恥ずかしかったことはないです」なんてモノローグを吐きながら野外放尿するはめになるヒロインですが、全く同情する気になれない。
確かにおかしな状況なのですが、ヒロインのおかしさ・非常識さが上を行き、もうちょっと酷い目にあってもいいんじゃ無いかな、くらいの気持ちを読者に起こさせます。

こんな珍騒動から、なんときちんと「ホラー漫画」が始まるんだから、森由岐子先生の凄腕っぷりよ。

いわゆる「ホラー」としての魅力は薄い作品ですが、「読者にどうなるか全く予想をさせない・予想を裏切られることの面白さ」を十二分に持つ作品として、ホラー漫画レジェンド殿堂入り作品である、と断定。

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