Subbacultcha

「サブカルチャー」という括りの下、文学・芸術・漫画・映画等について述べます。

2016年11月27日日曜日

日野日出志『蔵六の奇病』


日野日出志 『蔵六の奇病』
怖さ:☆☆
造型:☆☆☆
状況:☆☆☆



パッと数えてみましたが、装丁違いだけで8バージョン。
多分画像が2バージョン目、表紙として一番好きなヤツです。
その有名さ故に、紹介の必要は無いけども語っておきたい作品。

あまり頭は良くないけども、善良に暮らす蔵六。
バカだと言われても笑いながら暮らす彼を、不条理に「奇病」が遅い、彼の身体は腐り始め、異臭を放ち、村人は彼を疎外・忌み嫌い始める。
読者を怖がらせる仕掛けとしては「不条理に彼の身体に宿った体が腐りゆく奇病と、周りの反応」と「腐った彼の身体の外観」で、
例えば「恐ろしい魔物が現れて人を殺しまくる」とか「すごく怖い目に会って主人公が精神的肉体的に追い詰められる」といった、いわゆるホラー「っぽい」仕掛けはありません。

「蔵六」が仕掛けるのは、「わー!怖い!」という単発的な恐怖ではなく、生きる限り誰もが持ち続ける「存在への不安」。
答えに辿り着く事もなく、感動的な結末によるカタルシスもありません。

ただ「不条理に病に襲われ」「不条理に死ぬ」だけの話。
とはいえ、自分を含めた多数の人間がコレを名作、と呼ぶのは、ホラー漫画として優れているからでも、不条理が恐ろしいからでもなく、蔵六が病に劇的な変化を与えられながら、徹底的に日野日出志に醜く描かれながらも、そのラストで、蔵六が醜さでも己の行いでもなく、「死ぬことで形が変わるだけ」・「ただ死ぬだけ」であることが明示されるから、ではないかと思うのです。
それは日野日出志の優しさか、リアリズムか。
『地獄の子守唄』『毒虫小僧』がホラー漫画、ひばり書房の、自分にとって一番読み返した作品を聞かれたらコレです。




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