Subbacultcha
「サブカルチャー」という括りの下、文学・芸術・漫画・映画等について述べます。
2017年1月27日金曜日
カイトモアキ「秘密」
カイトモアキ「秘密」
怖さ:☆☆
造型:☆☆☆
状況:☆☆☆
「描き下ろし青春マンガアンソロジー コミック焦燥」より。
カイトモアキさんは、単行本が「焦燥」含め3冊のみの作家さん。
けれども、新井英樹の描線を更にぶっとくした様な、ドギツイ絵柄は一度見たら中々忘れられるものではありません。
コミック焦燥は、テーマの通り「青春マンガ」が集められたアンソロジーなのですが、
内実はといえば青春4割・性3割・暴力3割、と恐ろしく尖ったラインナップ。
俺は多分10代の終わり頃に古本屋でこの本に出会ったかなー、と思うのですが、マンキンやらうしおととらを愛読していた自分にとって、ちょっとこの出会いは鮮烈過ぎたというか、おぞまし過ぎたというか。
マンガにはこんな世界もあるのか、とショックを受けました。
カイトモアキ「秘密」。
岡島君の思春期はイキジゴク。何を手に入れることも出来ず、全ては絵空事だ、と高校生にして半ば人生へ絶望気味。
そんな彼が、体育の時間中に目に入った同じクラスの女子・井上さんは、腕から血を流しており、先生を呼び止めたところ、彼が保健室に連れて行くこととなる。
道中、井上さんは岡島君にお願いする。
「私…保健室じゃなくて…体育倉庫に行きたいの…」
完全にエロマンガ展開です。
エロマンガなので、岡島君は当然、読者と同じく「良からぬこと」を考えるのですが、
体育倉庫の中で井上さんは「思いも寄らぬことを見せてくれます」。
そしてあろうことか、「彼を異常な世界に誘います」。
決して、井上さんはモンスターに変身したり、人肉食を勧めて来たりする、いわゆる「ホラー展開」では無いのですが、
「青春が行き過ぎて、スプラッターになっている」くらいには言えるかもです。
この本に収録されているのはあくまで「青春マンガ」ではあるのですが、
キャラクターの考えていることがあまりにも、自分や他の登場キャラクターとの価値観とズレている、
「ディスコミュニケーションが強烈な加速度を持つ時」、
それもまた「ホラー」と呼べる要素を獲得する、んではないかな、と。
ちなみに「焦燥」は現在絶版で結構手に入れにくいコミックですが、
収録作品はそれぞれ単体でAmazonより電子書籍を購入出来ます。
お値段も1作品100円と気軽に出せる値段なので、是非ともこの恐ろしい世界の片鱗を味わって下さい。
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