Subbacultcha

「サブカルチャー」という括りの下、文学・芸術・漫画・映画等について述べます。

2010年7月8日木曜日

至高のリライト『ドリフターズ 1』



あさりよしとおの言葉だったか、
「オリジナルなんてない。与えられた素材の中でどれだけ個性が発揮出来るかが作家性というものである。」
うろ覚えなので間違ってるかと思いますが、この物が溢れ返る世の中、完全にオリジナルたることは無理です。
自分がやってる事はやや違うだけで、世界の誰かが必ずやってます。
それでも出来不出来、順位、そして個性によってその「やや違う」が客観的には驚くほど別のものに成り得るのです。

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前作『Hellsing』にて、日本のマイナー漫画の枠を大きく脱して、世界の一部の漫画好きに広く親しまれるようになった平野耕太さんの新作、『ドリフターズ』

ざっと大まかに言うと、スーパー偉人大戦×指輪物語、一応無理にジャンル分けするとファンタジー漫画です。エルフやドラゴンの跋扈する世界に、唐突に送り込まれてきた島津義久が織田信長、那須与一と意気投合、天下取っちゃるぜ!という、なんかもう字面だけでもワクワクするようなストーリィ。

当然日本偉人大戦ではないので、時代・国入り乱れて様々な英雄が乱入してきます。
ハンニバル、土方歳三、ワイルドバンチ、ジャンヌダルク。ある程度の史実に平野耕太エッセンスが加わり、魔人と化した偉人達が狂乱。面白くない訳が無い。

完全オリジナルキャラクターでも無いし、世界設定だって顔の見えない魔王が弱き者共を蹂躙しようとしているまんまロードオブザリング。でもまず主人公チームの組み合わせもこれまでに無いものだったし、そいつらが剣と魔法の世界に召喚されるというのも有りそうで無かった。

下手なオリジナルで世界を全て構築するより、ある程度何処かから借りて来て、枠はもうそこに任せちゃって、自分は描きたい部分に専念するという点で、平野さんはものすごく上手い。
パロディを物凄く上手く、笑いにもシリアスにも転用出来るってのが平野耕太の最大の武器だと思うのです。

例えば、ジャンプ漫画は明らかに過去作の焼き直しにも関わらず、漫画家に一から作る事を要求し、漫画家が無自覚に自分の中から取り出した過去作の思い出からオリジナルを「創り出し」、どっかで見たようなコピーみたいな作品が出来る、という結果的に皮肉な出来の作品が多いように思います。

オリジナリティを出すのは難しい。
でも、平野耕太は色んなモノから拾ってきた素材=コピーを意図的・自覚的に使う事で、凄まじくオリジナリティに富んだ作品を生み出す。素材セレクトのセンスと、設定だけ間借りし、ひどく演劇調の平野節を叫ぶキャラクター。
まだ一巻ですが、確実に面白い漫画になります。


…ドリフターズ、ってのはイレギュラーと同意義で、「漂流者」=「本来そこに存在しなかった人物達」=「この世界に召喚された主人公サイドの人物達」を指す言葉なのですが、作中で略称「ドリフ」と呼ばれています。
戦後に出て来た偉人なんかに登場してもらって、是非ともソコに突っ込みを入れて欲しい。

甲賀忍法帖なんかを書いてる山田風太郎版のドリフターズ。
➼明治化物草紙『ラスプーチンが来た』

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