劇場では千と千尋ぶり、映画としてはハウルぶりの久々のジブリ劇場視聴をしてきました。
映像の美麗さ、音楽の豪華さは流石劇場公開用アニメ。前評判の悪さも何のその、楽しく観れました。
ただ、ナウシカやもののけ姫を「ジブリ」と規定している自分からすると、少しジブリとしては薄っぺらかったです。そういったドラマ性も薄く、かといってトトロのように暗喩的なアニミズム、子どもの成長性も薄く。
素晴らしく小人のアリエッティは可愛いのですが、それだけ。アリエッティ萌映画でした。
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画像でも分かるように、腰に差したまち針は「剣」です。
つまりアリエッティはナウシカ、ドーラ、巴御前のように直接戦闘行為を行う、宮崎アニメ伝統の戦闘少女の系譜に名を連ねるヒロインです。同時に、千尋やシータのように、人生、生活という目に見えないものとも間接的に戦っています。洗濯をし、食料を調達し、恋や冒険をする、という複合型のヒロイン。故に、動き回る彼女は生命力に満ち溢れ、非常に魅力的。
ここは流石宮崎駿です。ロリコン力大爆発。(えっ?駿じゃないのにこんな可愛いの?)
問題は恋をする少年。
彼は幼い時から心臓に病を抱え、手術前の一週間を静かなおばあちゃんのお屋敷で過ごす為に引っ越してきます。屋敷に来た日、庭で採集をする小人・アリエッティを見かけた事で、彼の不思議な一週間が始まります。
そう、彼にとっては青春という物語の一エピソードに過ぎない。が。
単純に、小さい事は弱い。
故に、アリエッティと両親は、他にまだ小人が生きているかどうかも分からず、お屋敷から必要な量の日用品・食料(ローリエが葉一枚あれば一年持つらしい)を借りて(実際には盗ってますが)、暮らしています。
借りて暮らしている、という発想がそもそも僕には変で、小人は小人という種族であって、人間のミニチュアではないにも関わらず何故「盗み」を「借りる」と言い換えて、人間の暮らし振りを真似ているのか。彼らには彼らの独自の文化があってもいいんじゃないか、等と思いながら見ていましたが、彼らにとって「借り」は誇るべき自文化のようです。
そんな受け身じゃ滅びるわ、そりゃ。
でもまぁ、原作が童話なので、別段そんなことはどうでも良いんです。無粋です。
話を戻します。
少年はあろう事か、アリエッティとの第一コンタクトで僕の思った様な事を穏やかな顔で述べます。「君たちは滅びゆく種族なんだ」。
言われてアリエッティ涙目。
当たり前だよ糞が!!何アリエッティちゃん泣かせてんだ!!!!
この少年は小さい頃から心臓が悪いらしく、死に魅入られた様な発言を繰り返し、アリエッティと観客を嫌な気分にさせます。イケメンは何言っても許されるとでも思ってんのか。
挙句、アリエッティ一家を危機に陥れ、一時的なその回避を行うことで、まるでアリエッティを守ったかのようにアリエッティと観客の思惑をミスリード。
そして、アリエッティと僕たちはどこに敵を見出すか。
樹希樹林演じる家政婦がその標的にされるのです。
彼女は少年の病状を案じ、家を切り盛りしています。彼女には彼女の戦いがあったはずです。
家を守る為の害虫駆除は当然です。スズメバチの巣は撤去しなければならないし、ネズミや白アリの巣は叩かなくてはならない。途中までの彼女は明らかに家政婦として家を守っていました。
にも関わらず、路線変更した、いやさせられた?
彼女は執拗な小人ハンターと化し、挙句、ホームアローンの間抜けな悪役の如き痴態を観客に晒させられるのです。彼女を観て、あはは馬鹿だなぁ、と笑えと?
そして、人間に見つかった事でアリエッティ一家は引っ越さなくてはならないのですが、少年が最後に発する言葉に突っ込みたくなる観客が四~五割いるんじゃないかと思います。
「いや、誰のせいでこうなったっと思ってんだよ!!!!!」
宮崎アニメの悪役は魅力的です。
カリスマ的な悪役振りを発揮するムスカ。
何人もの思いを背負って戦う巴御前。
女性性と男性性を兼ねたクシャナ。
彼らは自分の為であったり、他人の為であったり、強烈な思いを持っているからこそ「悪役」なのです。理由のある、かっこいい悪役は名作となる上での必須条件ではないでしょうか。
本作にはそうした悪役が居ない。
アリエッティ、良作でも名作ではない。
試験薬として「マウスハント」のムービートレーラー。
これを見て、ネズミ視点おもすれええええ!!!ってなる人はぜひアリエッティをご覧あれ。小さきモノの視点描写は素晴らしいです。
でも、これ見て、何このネズミうそくさ、うわぁこの人痛そー、などと無粋なことを思っちゃう人は、見るのは止した方が賢明です。
青少年の観る映画は、こう在って欲しい。
➼超良作少年漫画映画『ヒックとドラゴン』
ホラーとファンタジーとギャグは紙一重。
➼現実を揺らす現実感『リアリティー』
原作。こっちの方が、変に泣かせようとしたりして無くて好きです。
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