Subbacultcha

「サブカルチャー」という括りの下、文学・芸術・漫画・映画等について述べます。

2010年9月7日火曜日

超良作少年漫画映画『ヒックとドラゴン』




中学生の頃、Flashの全盛期で、ダンデライオン、Kといった楽曲のFlashを目にした僕は、BUMP OF CHIKENの持つ魔力に取付かれてしまいました。
今思えばそこが始まりだったのでしょう、そこからNirvana,LED ZEPPELIN,Radioheadなんかをちょびちょび聴きだして、僕はそれらの要素を見出せないもの、いわゆる「メジャー」なものを目の敵にし始めました。(それらもまたメジャー処である事を突っ込んではならない)中二病、と言われるものの症状です。

あれから十年近くが経ち、病は消え失せたんじゃないかと思われる今でも、根底にはマイナーである事、程々に人に知られていない事に価値を見出しがちのような気がします。

大多数の人が面白いというものは、僕には面白くない。

余りにみんなから「面白いよ、これ!」と言われると、逆に面白くないんじゃないか?という前提でそれに触れてしまう事があるのが自分でも欠点だなぁと思います。

実際、「みんなが面白いもの=宣伝に莫大な費用が掛けられている=商業主義が見え隠れ、作品の内容は最大公約数的な魅力が選択されて金太郎飴のような似たりよったりのものが多くなる」
という面もあるので、お金がかかって無い小規模なものほど、アイデアやストーリーに力を入れていて、メジャーなものより内容が良い、ってこともある筈。

しかし、天下のドリームワークスが作った『ヒックとドラゴン』、これ最高でした。



必死で状況に立ち向かう主人公、最も危険で最も頼れる相棒、強さと愛らしさを併せ持った魅力的なヒロイン、強大で恐ろしい怪物達、間違いを間違いと認められるカッコいい大人、一致団結して闘うべき巨大なラスボス。
観てる最中で思ったのですが、あ、これ『うしおととら』だ。

魅力的な少年漫画に必要な要素を全て過不足無く揃えた結果、全く関係なさそうな所に奇妙な符合が生まれました。
本当に面白いものを作ろうとした時、大筋は普遍的なものになる。
愛、友情、勇気。そういった使い古されたものをどんなフィルターに通すか。
そこが名作と凡作の分かれ道だと僕は思います。
そして、本作も『うしおととら』もまぁ子ども向けのご都合主義にしとけ、とかとりあえず泣き所作っとこうぜ!みたいな下衆い思考ではなくて、とにかく良いものを作りたい、作ろう、と作り手が腐心した結果の作品だからこそ、名作と呼ばれるに相応しいドラマ性を手に入れたのです。


例えば、エヴァンゲリオンも名作の一つではあります。しかし普遍的ではないと思います。
主人公が受け身で、ヒロインは偶像で、大人が子どもだからです。
「逃げちゃ駄目だ」と繰り返す主人公は、一見必死で抗っているように見えて、思考を停止して現状から逃げている。
ヒロインはそんな主人公に変化を与える事も無く、ただヒロイン。
そして大人は自分で何かをする訳でもなく、そんな主人公達に自分のやるべき事を無理矢理やらせる。
結果、ひどく独り善がりな終わりを迎えます。
素晴らしいとか斬新とか面白いとかそんな作品ではあります。しかし、そこから「良い作品だった」という感想が生まれる事はないのではないでしょうか。
誰もが認められる、「普遍性」がそこには無いからです。


しかし、『ヒックとドラゴン』は「誰が見ても認める事の出来る映画」です。逆に言えば否定する事も出来ます。

キャラの造型が気持ち悪かった。
結局ご都合主義的だった。
吹き替えの声が気に入らなかった。
そもそもアニメを観ない。

ただ、その否定はこの映画の在り方・根幹そのものを否定する程深いものに達する事は出来ない。
この映画が道徳性・倫理観といった、大多数の人間が認める価値観を悉く肯定しており、かつ物語として面白いからです。
しかも、それをありふれたものにする事無く出来ている、力強さがあるのです。

最後まで見た観客は、この映画がご都合主義だった等と甘っちょろい事は言えなくなるのではないでしょうか。衝撃的なエンディング。

あと、3D映画というやつに僕はアリスでデビューして、何だこんなもんか、と少し落胆していたのですが、この映画は実に3Dの大画面という環境が映える。
それは多分大小、動静のギャップが激しい映画だからだと思います。物凄い速さで加速する飛行シーン、ドラゴンの圧倒的存在感。
監督が「遊園地の様な飛び出す3Dにしたくなかった、画面に引き込まれるような3Dにする事を心がけた」と言っているように、3D映像である事でそれらのギャップをより鮮明に感じられる、シーンごとの美しさをよりはっきり感じる事が出来るのです。
そして大画面で見る事に耐え得る世界最高峰のCG。最高にデフォルメされたキャラにも関わらず、日焼けした白人種の肌、陽の光に照らされる産毛、毛の一本一本を感じる事の出来るふさふさの髭。
正に3D劇場公開用アニメです。アリスとかなんだったの?ハッ って感じです。

またサントラが欲しくなる美麗音楽。
バイキングとドラゴンという現実とも異世界ともつかぬ不思議な世界をアイリッシュやオーケストラが彩るのですが、見事な合致。お美
事。シガーロスのヨンシーさんがテーマを歌っていて何とも神々しいテーマ曲にも関わらず、それが劇中の一曲として埋もれるほどハイレベルな音楽です。またサントラ買っちゃった。最近サントラばっか買ってる気がするぜ。

ともかくDVDやブルーレイが出て、それをレンタルで借りて来ておうちで観て、うん、中々良い映画だったね!なんて言って欲しくない映画。是非とも映画館で、3Dで観るべき。


テーマ。ドラム、鬼です。



『うしおととら』作者の現行連載作品。「少年漫画」から一歩進んだ所へ。
➼藤田和日郎の描きたかったドラマはココに在る『月光条例 14』

「選び取っていく」アツさ。
➼疾走、即ち人生『マインドゲーム』




ヨンシーも参加してるサントラ。アツい!ポストロック、アイリッシュ、アイスランド好き必聴!







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