ほんとはジャッキーチェンのベストキッドを見るはずだったんです。
でも街に出たら何と言う事でしょう、二つも映画館が潰れていました。世知辛いなぁ。みんな何処に見に行くんだよ、映画。いや、DVD借りて、家で見るだけで満足してるのか?家デートってやつですか?ふ、ふん!寂しい奴ら!
調べてみると、ベストキッドが上映されてる所が現在地から結構遠い…。
故に僕達は面白いという前情報と、レディヘがテーマソングということで、未だに公開されていたのかと驚きつつもほいほいっとそこにあった映画館に入ってしまったのです。
すごくいい映画を見ました。
魔女狩りの際の拷問の一つに、「水責め」があります。魔女と疑われた女は手足を縛られ、川に放り込まれます。浮かび上がってくれば、魔女、有罪。浮かび上がって来なければ、無罪。
この映画の観客は、この映画の倫理観の破壊・救いの無さを認める事が出来なければ、この映画を認める事は出来ないだろうし、認められてもそこには真っ黒な結末しかないのです。どちらにせよ、闇。
教師が自分の生徒達に対し、告白を始める。自分は教師を辞める事。自分の娘がこの教室の中にいる人間に殺された事。それを誰がやったとばらして探偵ごっこをするつもりはない事。
報復として、自分がやった事。
青ざめる生徒達と観客。
この映画に存在する笑顔は本当に空っぽで軽薄です。ある人は独り善がりに、ある人は臆病に、ある人は何の感情も無く、笑います。希望の象徴たる笑顔が、この映画ではどぶに吐いて捨てられています。
対して、この映画では無表情である事の意味の重さが凄まじい。松たか子が感情を抑えて、無表情でいるシーンはとても痛ましくて、とても怖い。彼女が闇に包まれているのか、相対するものが闇に包まれているのか、それとも全てが闇に包まれているのか。観客は、水に沈められては浮き上がり、息をする暇も与えられません。
それぞれの感じる痛み、衝撃をダイレクトに伝える工夫が随所に見られます。
絶え間なく、絶え間なく、観客を惹き付けて、叩きつけます。
道徳、倫理、正義、光。
それを徹底的に破壊するだけの説得力を持たせる為に意味を持ったシーンの数々。
闇を闇としたままエンディングまで突き抜けるスピード感が僕にはとても心地良かったのですが、一緒に見た友人は救いが無くてしんどかった、どっち側にも感情移入して疲れた、という感想を持っていたので、多分僕が教師に肩入れしまくっていたせいかと思います。
ヤフーのレビューでも絶賛・否定が両極に分れているようですが、映画にその場限りのハッピーさ、適当な肩書だけの感動モノ、教育的内容、デートムービーみたいなのを期待しない人には必ず楽しめる映画だと思います。
松たか子演じる、教師の復讐劇。それに伴う、幾つかのエピソード。
本筋にCGを使って安っぽい構成にする事も無く、音楽が出しゃばってその場を支配してしまう事も無い。影の掛り方も、重々しく、嘲笑的なシーンと訴えかけるシーンのギャップに何度も息を呑みました。映画全体を包む、観客にのしかかってくる重みのある雰囲気。
あくまでBGM的に使われている音楽のセレクトがすごい。サントラのラインナップが異様なのです。RadioheadとAKB48が同じCDに収録されるなんて誰が予想できたでしょうか。この映画で知ったのですが、Borisというノイジーバンドがとてもかっこいい。上手い事心情とシンクロさせるなぁと思って、すぐさまサントラを買いたい気分に迫られました。
AKB48の使い方が悪い比喩的な意味、というか明らかに見下された、馬鹿にされたイメージで使用されてたんだが、よく事務所は使わせてくれたな…
「悪人」は少し似たテイストかも。
➼「悪者」について思う所 『悪虐』、『悪人』、『ザ・ワールド・イズ・マイン』から
己をひたすら信じること。
➼決して消えない光がある『正義隊』
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