Subbacultcha

「サブカルチャー」という括りの下、文学・芸術・漫画・映画等について述べます。

2017年2月23日木曜日

うめざわしゅん「ヘイトウイルス」


うめざわしゅん「ヘイトウイルス」
怖さ:☆☆☆
造型:☆☆
状況:☆☆☆



短編集『ユートピアズ』、全部ギャグとも全部ホラーとも言える中、「恐ろしい」と思ってしまう作品。

夜に溢れる、暴力の根源は「ヘイトウイルス」なるウイルス感染によるものだった。
そんな発見のもと、争い・戦争が廃絶された世界において、ある少年が捕まった。「父を殺したその兄弟が、自身の母親と結婚するに辺り、バットで襲い掛かった」ためだ。
これは異常だ、ヘイトウイルスのせいだ。

「暴力衝動・殺意を持つことそのものが、異常である」とされた世界における殺意。
ちょっと見には、殺意≒ホラー、サスペンス
みたいに見えるかもしれませんが、この漫画の恐ろしいところは、「父を殺されても、母を寝取られても、その相手と笑って暮らさなければならない生活」を強要されること。

わざと「殺意」のシーンはベタ多めに、黒い画面で描かれ、世界設定を描くシーンにおいては、画面が簡素に描かれます。

強烈な絵・小道具は登場しませんが、のちに『一匹と九十九匹と』で見せる、「空虚・簡素故の恐怖」の 萌芽がここにあります。


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