アンソロジー:金風呂タロウ、祟山祟、オガツカヅオ、稲垣みさお等『ホラーコミックレザレクション vol.1』

アンソロジー:雨がっぱ少女群、祟山祟、オガツカヅオ、稲垣みさお等『ホラーコミックレザレクション vol.1』

怖さ:☆☆☆
造型:☆☆☆
状況:☆☆☆

☆満点作品です！

ああ、ようやく出てくれた！ありがとう、ありがとう！という気持ちを前面に出したかったものの、クラウドファンディング方式でこの待たせっぷりはちょっと怖いなぁ、という負の感情がやや大きい感じ…。
2号が出たら勿論買いたいと思わせる素晴らしい内容でしたが、クラウドファンディングは怖いので、次号はこの造本力・企画力で以って、出版社に持ち込んだりしてはどうでしょうか…。

という愚痴みたいなアレは置いといて、気になる作家さんたちの素晴らしい作品が、何個も！何個も！！
あんまりなぁ、と思う漫画作品はホントに少なかったです。中でも、ウアアア…。と脳内ホラー汁とヨダレが垂れてしまったのは、

金風呂タロウ「訪問」。得体の知れない「影」がドアホンを押して入って来る。愛犬が一瞬の内に犯され、妊娠。得体の知れなさ、「イヤな感じ」が、金風呂先生の狂ったように線の多い全て手書きの画面作りが、絵と物語が、非常に上手く噛み合ってます。オチも合わせて、短編なのにホラー読後感の強い作品でした。

祟山祟「愛妻弁当」。男性医師が持って来る弁当、その変遷を、彼が気になる女性患者が何となく追う。オチは予想のつくところではあるものの、五頭身くらいの可愛らしい絵柄の祟山先生のキャラクターが、まさかあんな壮絶な絵に、あんな雰囲気に運ばれて行くのは、予想外でした…。祟山作品屈指の、残虐・闇絵。

オガツカヅオ「かぐやひこ」。かぐやひこ、と名乗る精神病患者らしい男性と、メールのやり取りをしているゆみという女性と、何故挟まれるか分からないまもるという少年が少女と遊ぶ様子と。3つの場面が徐々に近付いていき、一つに合わさる時に見える真実の、そのおぞましさ…。難解です。ですが読み返す毎に、気持ち悪さが澱のように溜まって行く感覚が、何かを分からせようとするような、何とも奇妙な読感が残る作品。

の他にも、雨がっぱ少女群、稲垣みさお、生熊奈央、界賀邑里…　良いなぁ、って作品ばかりでした。
惜しむらくは、イラスト部分の無用さ。特に本としてまとめる必要が無いというか、中の漫画作品と噛み合うでも無く、なんか名前聞いたことある人の絵が載ってる、というだけのもので、意味が感じられません。
また、表紙イメージとタイトルロゴのちぐはぐさ。当初の、酒井さんご自身の漫画っぽい絵柄ならまだ噛み合いそうなところですが、この静かな絵にして、ド派手なレタリングのタイトルや作家の羅列は、ちょっと品の無い感じ、といいますか…。

「ホラー漫画雑誌」としては素晴らしいものなんですが、「単行本」としては(その制作過程も含め)、うーん、という感じでした。
いずれにせよ、もし次巻が出るとしたら、それはそれで非常に楽しみな企画です！

(金風呂先生ィー！色紙ありがとうございますぅー！！)