Subbacultcha

「サブカルチャー」という括りの下、文学・芸術・漫画・映画等について述べます。

2017年12月22日金曜日

黄島点心『黄色い悪夢』


黄島点心『黄色い悪夢』

怖さ:☆☆☆
造型:☆☆☆
状況:☆☆☆
☆満点作品です!

んあああああああああああ!!
奇想ホラーの名手、と呼ばれながらも(おそらく一部ではそう呼ばれているものかと思います)
何故か出ていなかった、黄島点心先生初めての「ホラー短編集」!!!!

同タイトルにて、リイドカフェでウェブ連載されていた作品を書籍化したもの。
帯にも「奇想ホラー」とありますが、黄島点心作品の魅力は、「ホラー具合」よりもその「発想のトリッキーさ」にあるところ。ギャグなのかホラーなのかよく分からない、けれどもその発想が飛び抜けていることだけは、一作品だけでも読んでもらえれば分かるはず。
とはいえ、『黄色い悪夢』、「血に落ちる」「鉋屑」を収録したことで、きちんと「怖さ」も獲得出来ており、この「1日1ホラー」初めての、☆10作品となります。

「断末夢」「鉋屑」のトリッキーさは既に記事にしているため探してもらうとして、

まず「人面葬」。崖から落ちて行方不明になった女の子は、周囲の男性とどんな関係を築いていたのか?「本当の顔はいくつもある・本当の顔なんてない」という二律背反を描き出すエッジのきいた風刺が、「面の皮が厚い」「でかい面をする」という慣用句を絵・物語にしたような強烈なラストに繋がります。その顔の多彩さにワクワク。

「満月美女涙」。亀とスッポンと、沼のほとりで暮らしていたという美女の話を、旅の男は聞く。昔話風の入りから、あからさまに「性」の暗喩じみたエロエロ怪奇がタイトルに繋がる時、それは怪奇に姿を変える…。エロを黄島先生が描くとこうなるのか。おぞましきエロ綺譚。

「血に落ちる」。2話に分け、蚊に猛烈に咬まれる人間・その人間を咬んだ蚊(!?)、の2つの視点から送る、ひどく狭くて、ひどく壮大な物語。おそらく、蚊視点の漫画自体希少かと思われますが、特にパート1、人間視点の物語はきっかりホラーとなっています。思いは、種族も時間も何もかもを超える、というダイナミズムが、2つの視点から必然性を以って描かれていますが、壮大なドラマに接続するホラーは大体打ち切りエンド的なものに繋がりがちなのに、きっちり「終わらせた」。黄島先生は単なるアイデアギャグ作家ではなく、「奇妙なドラマ作家」であること、を強烈に読者に印象付ける作品では無いでしょうか。

という全6話。ああ、これが本で読める、なんて濃密で幸せな時間であることか。
黄島先生は2007年にコミックリュウに『くままごと』が載り、2017年で画業10年となるのですが、こういう(という定型で括るのも申し訳ないくらいだけども)アイデア勝負的作家さんって、デビューからどんどん漫画力が掠れていくもの、の筈なのに、何故か黄島点心先生は描けば描くほどそのアイデアの狂いっぷりが増していくんですよ。
何が言いたいかというと、『黄色い悪夢』は到達点に過ぎなくって、黄島先生が漫画家生活を続ければ続けるほど、俺たち読者はもっと面白い漫画を読める、ってことなんですよ!!☆10作品とかちんけなこと言ってる場合じゃ無いよ!!2107年には☆100個だよ!!!
おい!これを見てるお前!黄色い悪夢をとりあえず1冊買え!面白かったら、そう!10冊!10冊買って、読んだり配ったり舐めたり擦り付けたり!!買うのです!!!!


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