Subbacultcha

「サブカルチャー」という括りの下、文学・芸術・漫画・映画等について述べます。

2019年12月26日木曜日

祟山祟『シライサン』

祟山祟『シライサン』
怖さ:☆☆
造型:☆☆☆
状況:☆☆☆


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崇山祟『シライサン』。崇山祟長編2作目の単行本にして、初のホラー漫画単行本、また乙一原作映画・小説のコミカライズ。大分漫画が映画に先駆けて発売されたため、どの様な差異があるのか、また視聴が楽しみ。

ヘンテコポップの方で無くホラーの方の崇山祟!…ながら、どうしても出て来る時折のヘンテコさが愛おしい。
オカルト趣味の女子高生・トリコは、 通う古本屋で見慣れぬ古書を見つける。そこに書かれた伝承を怪談としてクラスメイトに語ると、聞いたクラスメイト達は順々に同じ症状で怪死を遂げる。トリコは自分の作ったオカルト部にたまたま集まった面々と、その謎に挑む。

…「クチガメ」に比べると、きっちりホラーが志向された作品で、伝説・学校・古書・怪異・怪死とホラー要素が散りばめられながらも、あんまり「怖い作品」ではないです。ただ、それが悪いというのでなく、唐突に西尾維新「化物語」の、名キャッチコピーだなぁというのを引用してみますけど、曰く
「青春に、おかしなことはつきものだ」
と。
まぁ『化物語』然り『稲生物怪録』然り、ジュリーの「妖怪ハンター」、うしおととら、タケヲちゃん物怪録、りんたとさじ、バニラスパイダー…
これらの何が素晴らしいかって、妖怪や怪異が、「青春のよく分からない壁」を代弁してくれるところにあるんですよ。その壁は必ずしも「壁」でなく、後押しだったり、目標だったり、課題だったり、向き合う人各々に対して一つのものが違ったように見えるのですが、その「壁に向き合おうとする姿勢」こそが青春なのだ、と。
『シライサン』は怪奇・恐怖を通して描かれる、青春漫画なのです。

決して著者は主人公トリコと同年代という訳ではない(ような)のですが、彼女の最終的なオカルトへの向き合い方と、あとがきに書かれる著者の喜びと決意の吐露とが重なる感覚に、胸が熱くなります。
表紙の絵だけ見ると小学生でも面白く読めそうなのですが、ちょっとグロテスクな描写があるのと、また描かれた内容に対して「分かる」感覚を是非とも味わって頂きたいので、大学生以上くらいにオススメしたいところ。



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