怖さ:☆☆☆
造型:☆☆☆
状況:☆☆☆
☆満点作品です!
いけうち誠一『呪いのかつら』、再販タイトル。内容の差異は無し。いっ時、『呪いのかつら』よりコッチのが手に入れやすい、という時期もありましたが、本作の価値が狭い範囲で強く知れ渡ったあとの2026年においては、特に入手難度にも差異は無し。
怪奇漫画4篇を収録。
たまたま出会った押し入り強盗に(!?)、幸せになれるかつらを貰ってしまう主人公。思い人に振り向いてもらうために、まずい入手経路・不気味なものだと思いながらも身に付けてしまうと、かつらは我が身の一部の様になり…。表題作は、犬木先生辺りが描いてそうな、ホラー漫画としては比較的オーソドックスな、「美醜を気にする思春期の少女がマジックアイテムで美を手にするも、その負の側面から…」といった物語ながら、いけうち先生の丹念な描き込みっぷり・道中おこるヤケに残虐過ぎるイベントから、オーソドックス、という囲いから一段抜けている名作です。
それにも増して、本書で一等の名品、ホラー・怪奇漫画作品群においても一級と言えるのが「小ちゃくなあれ」。いけうち先生の元に送られて来た、ある少年の残酷奇譚。少年はひょんな事から、「人を小さくする能力」を得たのだという。能力バトルなんかでも一人は持ってるヤツが出て来そうな力ですが(ジョジョ6部にも居ましたね)、それを得た上で、「少年(人間)は何をするか」が主題の物語。普通の少年・普通の人間が、力を持ってしまったからこそ、不可逆的に筆舌に尽くし難い行為に走る様は、それこそ能力バトルの定番であり、『新世界より』なんかのサイコスリラーの主題にも描かれる所ながら、いけうち先生の倫理観はそれをSF的なものと捉えず、あくまで現実的なもの、「戦争の様な非日常の場では普通の人間が普通に行うもの」として捉えます。 早見純・三条友美作品の様に、(少年とはいえ・少年だからこそ)性的な眼差しが入り混じる事で、作品の持つ狂気の凄味が増します。
「檻」は上二作と比べると三位、という感じながら、演出の特異さではピカイチ。渡したプレゼントが跳ね退けられ、その箱の側面に納得の行かない不快さを感じる顔が現れる。
「霊界のささやき」はそれらと比べると地味に映ってしまう不運な作品ながら、いけうち先生の迫力ある恐怖シーンを味わえる作。
『蘭館』も凄まじい作品ながら、本作は別ベクトルで、いけうち先生の凄まじさを味わえるものと思います。


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