Subbacultcha

「サブカルチャー」という括りの下、文学・芸術・漫画・映画等について述べます。

2016年11月7日月曜日

アンソロジー『怪奇』2016 創刊号

 アンソロジー『怪奇』2016 創刊号
怖さ:☆☆
造型:☆☆☆
状況:☆☆☆




「アックス」という辺境の地でホラー漫画を描かれる工藤正樹さん。
『現代恐怖館』は、「学校の怪談」でブイブイ言わせた楢喜八さんを思い起こす様なエッジの利いた絵柄で、人間に潜む狂気をバリバリ掘り起こす、正に現代の恐怖を描いた良作。そんな本を作り上げた作家が編集長となって怪奇マンガ誌を作るってんだから、期待せざるを得ない!
と思ってたらやっぱり素晴らしいアンソロでした。

個人的には工藤正樹さんと、花輪和一が同人誌に!?というのとで買った本でしたが、素晴らしいな、と思わされるのがいくつか。

90年代ホラーM(というか主に自分が連想したのは財賀アカネさん)を思い起こさせる、可愛らしさと怪奇が同居したアケミックス「ラブユーフォーエバー」、
蛍光灯を見るのがイヤになる、という点で見事に日常に寄り添いまくった恐怖を演出したなで拓瀬「影蟲」、
ホラーとは言い難いけども色んな面(ババア、雪景色、性欲、性欲…)で魅力溢れた快作、今純子「雪が降る」、
丸尾的イメージをデフォルメした独特なタッチのイラスト作品、FUMICS「ラフ・カディオ」、
画太郎といばら美喜の奇跡の邂逅を文章中で果たしたエッセイ、宮ノ森章太郎「ススメ怪奇マンガ」、
ありふれた横断歩道が上手く恐怖の対象に変化するエガワタロウ「border」、
正直過ぎる展開に虚を突かれまくる工藤正樹「隣人」、
表紙絵も担当する絵師による、不思議・怪奇・恐怖の同居、森環「pool」
とまぁグッと来るものが多過ぎたのですが、特に特に、イケてんなぁと思ったのは以下2つ。

あー、怪奇アンソロみたいの作ると、一人はこういう作家居るよね。「コワイ系」のキャラを使ったしょうもないギャグマンガみたいなヤツ。と思って読み進めていったらこの見開きの使い方!シビレル!!!池田匠「妖怪クッキング」。
やはり絵じゃないよな、と思わされた、というか、「この絵だからこそ狂気が引き立つ」のか。たか「やせっぽちの君へ」。
特に後者は、商業アンソロでは、商業レベルではまず採られない作家、だからこそ同人誌で、同人誌が出る意味がある、と強く感じました。

これが年刊誌!!
出し続けられるのか、工藤さん!!!
定期的にホラーに触れられる場がどんどん少なくなって来ている中、花輪和一・森雅之など大御所も巻き込んでの意欲的な誌面作り。大応援・大期待です。


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