Subbacultcha

「サブカルチャー」という括りの下、文学・芸術・漫画・映画等について述べます。

2025年6月21日土曜日

塚本尚美『自覚症状』

怖さ:☆☆

造型:☆☆☆

状況:☆☆☆ 

「描かれた内容」そのものはあまり怖く無いのに、その「不穏な描線」があまりに怖い、ホラーM中期の奇才。作品内のヘンテコな論理でも奇才・奇想っぷりを見せ付けて、オンリーワンな魅力を発されていたものの、遂に紙では本が出ず。おそらく、雑誌掲載分もぶんか社の外には出てないかも。

この、人を強烈に暗澹とした気持ちにさせる線は、是非とも紙で楽しみたいものですが。

本短編集収録6作中、表題作「自覚症状」はもっとも分かりやすく魅力的な、勢いで全部ぶっ飛ばす系統のホラーながら、個人的には「正しい時間の使い方」が一番ヘンで好きなヤツ。

女学生の間に「夜中に突如現れて時間を聞いて来る人面犬」のうわさ。

寸分違わず時間を答えられないと、「時間の国」に連れて行かれるのだという。…人面犬が?時間??の国???

初っ端から現れた人面犬が、他の野良犬に食い付かれて顔面の皮が剥がれるなどし、な、何なんだこの人面犬ホラー漫画は、と読者がドン引いていると、「右目は過去の目なので時計の短針で突き刺すと過去を見れる目が生まれて来る」等々、どんどん作品独自の論理が打ち込まれて来てボコボコにされます。そもそも絵が怖い、だけでも凄まじいのに…。

勿論ホラー漫画がお好きな方に読んでいただきたい所ですが、「トランキ」やふくしま政美・たつみひろし等異様な密度を持つ漫画がお好きな方にも是非。





 

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