Subbacultcha

「サブカルチャー」という括りの下、文学・芸術・漫画・映画等について述べます。

2016年12月29日木曜日

このマンガがすごい2016(ダーク編)



激変の年でした。色々と生活環境が変わり、自他共に「大丈夫?」な感じで年越しを迎えます。

こんちわー。年の瀬です。
そんな訳で今年もこのマンガがスゴいを陰湿なヤツが、陰湿な感じで選ぶ。せっまいランキング、始まります。

対象は「2016年中に出版されたマンガ単行本のみ」
去年よりも今年はホラーホラー、と言いまくってて、一般新作を広く見渡せてない感がありますが、そんな俺にもこれはイイぞ、とゾクゾクくる本はたーくさんありました。
このマンにうめざわしゅんさんがランク入りして溜飲が大分下がった感はあるけども、トネガワ一位なんてなーんかおかしくなーい?みたいな方には共感いただけるかもしれない内容、やもしれませぬ。

はい、では俺がビビッと来た10冊、ご紹介します。
ベスト3以外は、順不同・同列です。


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・梶本レイカ / コオリオニ

まず声を大にして言っておきたいのは、俺は劇画狼さんのフォロワーではない、ということ。別段このマンガがひどいもナメクジ長屋もチェックしていなかったし、エロ劇画についてそれほど興味津々でレビューを追っかけることも出来なかったし、劇画狼さん的存在になろうみたいなのも全く無いんだけど、
でも、おおかみ書房を立ち上げてくれて、エクストリームマンガ学園を立ち上げてくれて、そして、しつこく大宣伝してBLを知らない俺にコオリオニを教えてくれて、とってもありがとう、なのです。

昔、永山薫さんの『エロマンガスタディーズ』を読んで、「ちゃんと」エロマンガを読んでみよう、と思っていたのは、勿論エロマンガスタディーズが面白かったってのもあるけど、一番は「エロマンガが自分のフィールドで無かったから」。何も知らない場所においては、ガイドが居るかどうかで歩き易さが全く違う。

BLは読んでみたかった、でも何を読んだら自分が面白いのか、何に手を付けたらいいのか分からなかったから、劇画狼さんの存在がとてもありがたかった

と、本の内容を全く語っていないのですが、こちらは「ヤクザと警察、それぞれの世界で孤独を感じていた男たちが、互いを見つけ、全てを共有する共犯者となる物語」です。
異性に置き換えても成立しなくも無い話なのですが、「男と男」を主役に据え、更に肉体関係を持たせることで、強固な「彼らにしか分からない世界観」が産まれています。お前は俺だ、と互いが思うことが出来る相手。道具は手の延長である、みたいな話か。そのどうしようもない共犯関係と、彼らを取り囲む状況とが、もう胸を締め付ける締め付ける。上記の様な、きっちりと「BLであることの必然性」を踏まえながら、「ハードボイルドドラマ」であることが成立している、奇跡の様なBL漫画でした。
同作者『高3限定』も、そのどうしようも無さが一種のホラーを産み出す怪作。
ちょっとちらつく一文があるなぁと思ったら、レミオロメンの粉雪でした。

「粉雪 ねぇ 心まで白く染められたなら二人の孤独を分け合う事が出来たのかい」


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・藤田和日郎/双亡亭壊すべし

そりゃあ大好きだよ、大好きさ、藤田和日郎!!
でもそういうエコヒイキ抜きにしても、中々こんなワケの分からん・面白そうなスタートの物語はそう無いですよ。

幽霊屋敷を探検する少年2人組。
のあとを付いてくる、同行した少女に声を掛けると…。女の子はホラー漫画的展開になっていた。女の子はどうなったかよく分かりませんが、
二人は大きくなり、その国の首相と防衛大臣となり、その幽霊屋敷にミサイルをぶち込みました。が、幽霊屋敷はびくともしませんでした。
ので、色んな能力者たちが現れ、幽霊屋敷を壊すことを画策する、でもまぁー見るからにモブいモブい、どんな酷いパーティーが展開するやら!が2巻終了時まで。


なんだこの開始。
どう見ても藤田モブ顔の少年・緑朗は、「父を双亡亭に殺された」という因縁から男として急成長し始めるし、これまでの藤田作品主人公格的強さを持つ青一はイマイチどんなチカラを持ってて何をやってんだかどういうキャラなんだかよく分からんし、主人公的立ち位置の凧葉は全く戦闘能力無いのに何か流れで双亡亭の中に入って来てしまったし、で、2巻が終わってもキャラクター・ストーリーがどう転がっていくのか全く読めず。
全く読めず、ワクワクするのです、チキショウ!
合間合間でキャラクターへの愛着を湧かせる小技がガンガン炸裂し、ストーリーのワケの分からなさによる読者の投げ出しを防ぐ手腕は流石藤田先生。ああ、ワクワク!!

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・五十嵐かおる/いじめ〜願い叶う日まで〜


去年辺りから「ちゃおホラーちゃおホラー!」と喚き立てていたのですが、ちゃおの人気シリーズ「いじめ」にはまだ手を出してませんでした。
特に大々的にはブログに書いてたりツイートしたりはしてないのですが、今年会社を辞めまして、住んでた所を離れる寸前に、出張から帰って来た先輩が「飛行機の中で読んでたコイツ、やるよ!」とくれたことで初めて手にしました、いじめシリーズ。

で、なんでこうした所に載せたかと言いますと、この本単体としては特に評価云々思うものでは無く(「目ェでけェェェェ」くらい。)、「いじめってやだなー」と思った、くらいのものなんですが、
まず、見て下さい、このシリーズの量!


そして、このいじめシリーズ、本当に「いじめ」を描くシリーズなんですよ!
どういったことがいじめの発端となるか、
いじめてくるヤツはどんなヤツか、いじめられる人間にはどんな雰囲気があるか、
いじめのバリエーションとしてはどんなものが考えられるか、
いじめ・物語の結末としてはどんな終わり方があるか、
といった「いじめをパターン化したものが延々載せられている」のがこのシリーズみたいなんですよ…。
1冊しか読んで無いのですが、ホラー漫画大好き人間としては、魔太郎・黒井ミサ・たたりちゃんの如く、「やられたらやり返せ!」だと思うんです。勿論誰しもそれが出来る訳ではないから、逃げ場所としてそうした漫画があるもの、だと思っていたのです。
なのに、ただその記憶をわざわざ思い出す様な「いじめの定型化」から、このシリーズの購読者は何を得ているんだろう?と心底不思議に思ったのです…。漫画とか創作物とかって、逃げ道だったり心の支えだったり考え方の転換点だったり、じゃないのか?
たたりちゃんとかうしとらじゃなく、こんだけ気が滅入るもの(あれ?ちゃおホラー?とか思うくらいには割と死人が出る)を、気が滅入る日常の延長線で読むのか、JSたちよ?


スゴいな、とは思ったんですが、ちょっとちゃおホラーの様に集めてみようって気には全くなりませんでした…。











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・白川まり奈/妖怪繪物語


やってくれました、古書ビビビとまんだらけ。あとPヴァインも。
白川まり奈の未収録作品、単行本化。
キノコンガを単行本に再録、ってだけでも、おっ、Pヴァインなんかやりよるぞ!と気持ちがかなり持ち上がったのですが、まさかこんなことになるとは。

同時にまんだらけが進めていた『犬神屋敷』の単行本化、ひばり・黒ひばり・曙3ヴァージョンを、しかもそれぞれの単行本シリーズと並べても全く遜色がない装丁にする、というこだわりっぷりは、実にマニアを喜ばせる手だなぁー、こちらもすげぃぜ!となったところではあったのですが、
単純に本・作品としての内容で『妖怪繪物語』が物凄かった。

白川まり奈先生は、たとえばひばり書房作家を上手い・上手くないグループで2分するならば、残念ながら「上手くないグループ」に入ってしまう作家さんです。
けれどもその筆には迫力があり、闇がある。ジクジクと描き連ねられた妖怪たちは、画家の手遊び等では決して無く、暗がりから現れ出た「闇の正体たち」です。
で、大変失礼ながら、上手くない、なんてことを書きましたが、それは「漫画として」であって、絵師、特に「妖怪絵師」として見た時の白川まり奈は、もう別格。
妖怪が好きで好きでたまらない、妖怪に対して妄念執念が余りある、ことが一目で分かる絵の力。

漫画中でも唐突に絵物語調の展開がよく差し込まれる、という印象でしたが、絵物語単体で見た時の白川まり奈と言ったら、迫力で言えば石燕・水木を凌駕しています。
5600円です。も、ぜーんぜん安い。展覧会とか行ったら一回1500円くらいでしょ?コレ一個ウチにあったら、もーう並の妖怪画展に行く必要ない。あれ?コレ漫画じゃない、気が…いやいやいや、とにかくスゴイ本だから。初版しか無い本だから。ホント無くなる前に買っておかないと絶対後悔しますよ。

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・杉浦日向子 / 花のお江戸の若旦那


落語なんかによく出てくる「若旦那」の定型みたいなヤツの、遊び暮らす様がただただ描かれる短編集。フルカラー。

たとえば「合葬」や「百日紅」の様な人間ドラマは全く無く、父親に叱られてものらりくらりと怒りをいなして、遊び暮らす若旦那には憎々しさを通り越して、おとっつぁんと共に呆れ返りながら見守る気分になります。
その「気分になります」ってぇのがね、この本の肝ってえワケでやす。
江戸、庶民文化がむせ返る・溢れ変える魅惑の題材、数多の「時代もの」が世に出て来ております。
が、「江戸人情もの」、これぁ分かります。いつの世も変わらぬもの、それは人の心、ってんで、江戸らしい型に嵌めつつも情を書くってえのはまぁ名作家でやす、でやしょうけども、問題は書いてるお人も読んでるお人も、誰も江戸の世には生きたことがねぇ、ってもんで「空気」を知らねえ。だがおかしな話だがね、にーさん、
知ってる人間を知ってるかいぃ?
知らざあ言って聞かせやしょう。
当代における「江戸情緒」ってえもんを描けるのは、日本広しといえども、一ノ関圭と杉浦日向子だけ、でさあ!!


そう、変な話なんですが、何故かこの二人は紙の上に江戸を作り上げてしまうんです。

『花のお江戸の若旦那』の感動ポイントはそこにあって、まるで見聞きして来たかの様な空気感に、思わず作品世界に入ってしまう・作品の中に入った気分になってしまう、巧み過ぎて。また彩色してあるというのも非常に具合がよくって。

本を開けば顔がニヤける、何が無くとも幸せな気持ちになる。あっ、こういう「読書」もあったのか、と再発見の思いでした。最終ページがもう、胸が一杯になるほどの美しさ。




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・桜壱バーゲン / 漫画ルポ 中年童貞


何で読んだか忘れましたが、漁師さんの間に伝わる言葉に
板コ一枚下ァ地獄
というのがあって、これは漕ぐ船と海との間には板一枚分しか差がなくて、いつも死に隣接しながら仕事をしなきゃならん、という言葉なのですが、
そういう「物理的な死線」で無くとも、過労死・孤独死、巻込み自殺、事故死、今や「どこに居たって死線」であることをこんなに端的に感じられる漫画はないです。

仲良しの先輩と「〜さんはイイよねー、すき」みたいな話を本人(人妻)のおらぬところで何度か話したことがあるのですが、
今や「結婚出来る」「異性と性行為が出来る」のは能力の一つなのです
どゆこと?とクエスチョンマークが浮かぶようならこの漫画を読め。

地獄の目次録。


個人的に一番地獄だ、と思った人。
度重なるアクシデントの結果、自己否定の極みに追い詰められ、精神障害を積めるだけ積んだような状態になり、異性に好かれたいのに居場所を作る為に自分を同性愛者だと偽ってそのコミュニティに近付いて性的関係を結び、自己嫌悪を重ねる…。
ルポ著者の中村さんによると、彼は少しずつ自分の望む方へ歩き出せている、というようなことが書いてあり、一抹の救いとはなりますが…













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・関根美有/はびこる愛

正直舐めてた。
やはり漫画は「絵」なので、絵柄の好みで判断してしまうことが多々あるのですが、俺の好みとして「ゴリゴリと描き込みまくったような絵」というものがあって、どうしても簡素なイラストレーションチックな絵の漫画は遠ざけがち。
関根さんの漫画も気にはなっていたのですが、「遠ざけ枠」に入ってました。人から勧めて貰わねば、買う所までいかんかったばい。


で、関根さんの漫画なのですが、
文章を寄せられている高野雀さんの文章がズバリその特徴を書いていて、

飄々とした絵のタッチはそのままに、世界を追い詰めるように再構築する解像度が異常に高く、これは漫画なのか?と頭がグラグラしました


彼女が書いている「ママール・フ・モモール、なりに」というについてのこの文章の如く、関根さんの漫画は一見フワッとした入り口なのに、その中に入ると世界の全要素を詰め込んである様な、「沼」感のある作品ばっかりでした。(ちなみに俺もこの漫画が一番衝撃的でした)

なんか、全部が描いてある、という感動、コレは、高校生の時にカート・ヴォネガットの『ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを』を読んだ時の感じに似てる、とゾワゾワしました
こんな恐ろしい奥行きの本が、作品が、特に誰に賞賛されるでも無く(シカク界隈、本を作ってらっしゃる関係者は除き)、普通にワッと平積みされている、世界は広い、世界は狭い、世界は怖い


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第3位

・雷句誠 / Vector Ball
『どうぶつの国』はなんででしょうね、何か読まなかったんです。ガッシュすげえ面白いなー、つって読んでたのに。
で、また何ででしょうね、この『ベクターボール』はマガジン本誌で読んだんだったかなー、と思うんですけど、
何やってんだこの漫画、って読み終えた後笑いもせず絶句しちゃったんですよ。
で、単行本が出たんで買ったんですけど、ほんとよく分かんなくて。
一回中古屋に売っちゃったんです。
でも3巻が出て、気になって、また買ってしまった。今度は電子書籍。
…アレ?これ、なんか、スゴい…?
とりあえず、以下の4枚の画像を見て貰いましょうか。



大体、主人公の要素がこの4枚の画像に5・6割入っているのですが、なんか分かります?俺のこの、困惑する感じ。
主人公と周りの人間の掛け合い、明らかにおかしいのにそれに対するフォローもツッコミも何も無く漫画が展開していき、それもいじめられてるとかでもなく、当たり前の日常としてただ過ぎていき、明らかな戦闘パートみたいなところ・シリアスなシーンで、シリアスな雰囲気なのに主人公がへそ毛がどうのこうの言っている

概ね能力バトル漫画、といっても差し支えなく、かつ主人公の能力が「自身の思い通りに造型物の形を変える」という「補助能力MAX」みたいなヤツで、主人公側に居るチカラが使える人たちが弱々しいのばっかりなので、それをどう勝利に導くか?
不利を有利に変えて大逆転、ジャイアントキリング!みたいな胸が熱い漫画、なんですが…。

・主人公の趣味がブスを笑うこと→そのせいで全く友達がおらず、友達「っぽい人たち」も異様なキャラクターのみ
・ブスが明らかに現実離れしたブスばかり
・戦闘中もイマイチシリアスに入り込まない etcetc...

「能力バトルとしてとても斬新」でオススメしたいって所が大いにある漫画なのですが、現時点ではそれ以上に「読む際のテンションが全く分からず戸惑う漫画」として大いに薦めたい漫画、なのであります。恐ろしいよ俺は雷句先生の脳味噌の構造が。
今のところ、「でも主人公には評価すべき所があって、」みたいな理由付けが登場するも弱過ぎる感じ、で少年漫画として今一歩ですが、俺個人は是非とも読み続けたい漫画。
そういやさっき「しりあす」をカタカナ変換しようとして「尻明日」なんてのが第一候補に出て来たんだけども、言うなればそういう漫画です



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第2位!

・ひらのりょう/FANTASTIC WORLD
「歯ちゃん、世界は美しいねェ。」
歯とビコの、想像を越えた世界での、旅。

WEB連載時から気になる作品だったのですが、これ単行本にしたらフルカラーだしめちゃお金かかるんだろうな、どんな形で書籍化するんかな、
って思ったらB5判・2,980円。やすぅーい!(!?)
…漫画単行本にあるまじき値段設定、アメコミ・BDでももうちっと安かろう、みたいな価格設定と思われるでしょうが、お金を出して買えば、これが相応どころか、ちょっと安い、くらいの値段だということが分かります。必ず。

「世界の美しさ」というものが仮にあるとして、それは美しいものだけを集め切ったら出来上がるものではなくて、「全てが其処にある」みたいな状態こそが、美しいんではないかと思うんです。
FANTASTIC WORLDは、驚嘆すべき世界の何もかもを本の中に封じ込めようとする巨大な挑戦。其処に生も死も、嘘も本当も、全部あるから輝いて見えるのです。


デーン。スターウォーズばりのタイトルコール。
何も具体的な作品情報を与えられなくて申し訳ないのですが、けれどもこの作品を読み終わった後の満足感・嬉しさは、この作品を読み終えることが出来たから、味わえるもの。
本を読み終わったとき、きっとあなたはもう一度最初に戻って来て、このタイトル画面を観たくなることでしょう。
でも!まだこの喜びは終わらんのです!何故ならば!1巻だから!!!


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第1位!!


・逆柱いみり /ノドの迷路
(この画像は特別版の表紙。)
またアレか!お前は好きな漫画家の新刊が出たから贔屓するとかそういうアレか!!小狡い工作みたいなことをしてからに!!
違うんです!!本当にノドの迷路が一位なんです、一位なんです!!!
一位なんです。
購入前、ふとあなたは思うでしょう。
「なんだろう、この意味深なタイトルは。」

「アレっ ノドんとこ変じゃね?」「迷路みたくなってんじゃん」
ノドが迷路みたいになって、始まる物語。
始まって1ページ目にして、本当にそのまんまタイトルが回収。
あれ?どういう意味の言葉なんだコレは?→言葉のまんま絵だった、という衝撃は去年出会ったぼく脳作品群に似た雰囲気がありますが、いや、でもよく考えたらいみりさん、前からそうだったわ。
象魚、赤タイツ男、はたらくカッパ、ネコカッパ。

友人のノドに迷路が出来たので、保健医に見せに行くと、友人は改造されて怪人になる。元へ戻す方法を求めて旅に出る。

これを読んで、あーなるほどそういう話ね、となる読解力が異常な超人はこの本、引いては逆柱いみりの本を読む必要なんて全く無いのですが、
「全く人生には必要の無いものが、なんだかゴチャゴチャと積み重なって意味があるのか無いのか分かんないけども、何かの形に見えたりするのがスゴく好き」という方は僕と握手、是非とも逆柱いみりを読みましょう。

そうして何だか分からんものがゴチャゴチャと連なる旅路を、大したストーリーも無く眺めるだけなのですが、けれども今回は旅の目的があって、旅の終着点があります。
そこが実に痺れて、ね。
行って、帰って来る。何かを持って帰って来る。必要以上の意味も無く、というかもしかすると全く意味も無く、旅が終わる。
その行程が愛おしく、終わりに満足感がある。

人の創作物は、追体験だったり疑似体験だったり、ということが大いにありますが、この本は「読み終わるまでの心地良さが、旅行から家に帰って来た時に似ている」という非常に希有な読書体験をもたらしてくれます。
上に書いてあるようなことを読んで、チラとでも何かを感じた方は、買ってみましょう。

➼『ノドの迷路』がとても楽しかったので逆柱いみり全作品レビューをしてみようと思う
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以下次点。これらもすっげーオススメなのです。


・うめざわしゅん/パンティストッキングのような空の下で:
あ、本出るんだ。と安心したうめざわしゅんさんの久々の単行本。ほぼ「漫画で喰って行く」ことが出来てなさそうな作家さんだったのでちょっと安心?俺も生涯何かに逆らって生きていきたい、という気持ちを新たにしました。昨年発売の単行本だったため、ベストテンから外す。

・加藤伸吉/惑星スタコラ 4・5:
こんなに全てが想像・創造された世界、中々見たこと無いです。でもそれが「ファンタジー」を描くためでは無く、あくまで「人間愛」「夫婦愛」「父子愛」を描くための小道具、というのがとても加藤伸吉さんらしくて、素敵な終わり方だった。のに!1〜3巻絶版のままてどういうことじゃいコラ講談社!手放したらもう読めなくなりそうだったので、売りかけてやめた。これも昨年発売で外しました。

・ホラーアンソロジー/死角:
ほぼホラーに移籍した雨がっぱ少女群さんの「文学青年」、心霊イイ話風の展開からの、スカムホラー感、ホラー漫画として完璧です。プリップリの女の子の部分を描いていた過去が、これほど臓物描写にしっくり来るようになるとは誰が考えていただろう。

・堀越耕平/僕のヒーローアカデミア 11:
来るべくして来た、世代交代のエピソード。この世界における、という意味では無く、言葉としての「ヒーロー」をもう一度考え直させられるアツい巻でした。依然、勢い衰えず。

・福地翼/サイケ、またしても 6:
「主人公が特定の場所で自害することで一日をやり直す」という能力だけで、能力バトル感ある他のキャラと戦わされるヘンテコ能力バトル。心理戦の巻。いや、この人の漫画の上手さ、『うえきの法則』の時と別格ですよ…。変さよりも、主人公の心の成長の行く先が楽しみです。

・中川ホメオパシー/干支天使チアラット 1:
正直『抱かれたい道場』『バトル少年カズヤ』のノリは、ちょっとテンション高過ぎる感が微妙に自分とは食い違う感覚があったのですが、チアラット、すきー!女の子の可愛さに惹かれちゃってるのはまぁ否定しないでもないですけど、魔法少女パロディもの・主人公の性格・パロディネタを呆れるほどに散りばめた、という「ひねた要素」の盛りっぷりが何か心地良い。

・田中圭一/Gのサムライ:
正直、田中圭一さんに関しても『神罰』以降は「パロネタ・下ネタの人」という感じで距離を置いてたのですが、この下ネタの極みみたいな漫画、無性に笑けて笑けて…なんなんでしょうね?年?今年一番笑った漫画はコレ。

次点も含めたらなんかアレだな、リイド社ばっかりだな!!

いいか悪いか分かりませんが、ネットのアオリばかり受けてしまっているのかもしれません、確かに良いなと思って選んだ筈ではあるのですが。

昨年は少女漫画に手を出せたら、なんて言ってましたが、次の年はネットに影響されすぎないように注意しよう、ってところかしらん…。
ではでは、よいお年を。

去年の分。
一昨年の分。

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