Subbacultcha

「サブカルチャー」という括りの下、文学・芸術・漫画・映画等について述べます。

2024年12月31日火曜日

ムロタニ・ ツネ象『人形地獄』

怖さ:☆☆☆

造型:☆☆☆

状況:☆☆☆

☆満点作品です!

 ゆかいまんが・学習まんがが主なキャリアとなるムロタニ・ツネ象先生の作品群において、『地獄くん』と本作と2冊のみ(QJによる復刻を含めれば3冊)になる怪奇漫画単行本。

地獄くんと墓場の鬼太郎との中間色的怪奇ヒーロー漫画「怪奇死郎」(扉絵には怪鬼死郎と描かれている...)に、「虫地獄」「人形地獄」「パビリオン地獄」、とじごくじごくしたタイトルの作品が続きます。

タイトルに偽りの無い、容赦無い地獄っぷりの残忍さ・出血量に加え、水木漫画の背景的に異様に描き込まれた画面が美しく、唯一無二な世界観なだけに、ムロタニ先生にもっと怪奇漫画を描いて頂きたかった...と身悶えする様な作品集ですが、中でも表紙にあしらわれた「人形地獄」の怖さ!鮮烈さ!内容も凄まじい。

少年剣士とその妹がたまたま知り合ったアメリカ人姉弟。姉が人形に襲われてる現場に兄妹は行き会い、通りがかった姉弟の近所に住む日本人女性の車に乗せてもらって姉弟宅へ。しかし、人形を操作していたのはその女性、彼女は強くアメリカ人を憎み、特にその姉弟の家族に憎しみの中心は在った…。という話の中心に「原爆」を据えている物語。

SFジャンルにおいては多々あれど、ホラー寄りの文脈で原爆を取り込んだフィクションをほぼ知らず、ギリギリ山上たつひこの「ヒロシマ1969」が近い様にも思えますが、ど真ん中に怪奇漫画の要素として取り込んだ(しかも揶揄したり変な史実の歪め方をしたりするでも無く)のは本作位では、と思います。

そうした特異性からの評価も出来る作品・作品集ではあるものの、単純に怪奇漫画としてとても面白いので、一家に一冊備えたいですね。



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