怖さ:☆☆
造型:☆☆
状況:☆☆☆
諸星大二郎劇場第五集、ながら四集『アリスとシェエラザード』の続きものになっています(…本作の連載は続いてる様だし、もうシリーズ名としては破綻し始めてる気が…)。
で、こっからが本題なんですが、アリス・シェエラザードの二人組が、少し変わった能力を駆使して怪奇な事件に行き合っていく、という枠組みは変わってないのに、おかしい、前単行本より面白い…。
「怪奇連続譚」的枠組みを持つ作品、繰り返せば繰り返すほど、主人公グループは絶対に死なないので緊張感が無くなり、殺す訳にもいかないので発生するイベントは徐々に弱くなって行き…という負のスパイラルが存在するのですが、本作は最初の辺は、既存の怪奇モノの諸星風パロ・洋風パロ、みたいなノリだったのが、どんどんきちんと「19世紀ロンドンにおけるゴシック怪奇譚」をやる様になって来てる…!
本単行本収録話も、作家の気持ち次第で、アッ、これポーorラヴクラフトのパロになるな、という瞬間があったにも関わらずそっちに持って行かない、という筆力の凄味!進むほど純度が増して行く、そういうのもあるのか!
続けて読んでって良かったです。
個人的に良かったのは、交霊会が異界への通路を開いてしまう様な「交霊会の夜」、悪魔によって行われるゲームの根底に在るルールが見極められない「5枚のカード」、姿が隠された参加者の生死が入り乱れる「仮面舞踏会」、タイトル通り会を猫に対して行う「猫の交霊会」等々。…これだけでもう、8つの収録話中4つもが良かった、という異様なヒット率ですが、中でも初っ端、カラー口絵もある「ユディット」が素晴らしい。
画家の制作途中の絵、登場人物2人の顔以外は完成している。画家は、夢で見た女の顔が印象的で、アリスとシェエラザードにその女を実際に連れて来てモデルにしたい、と依頼する。夢・現実・フィクションが見事に折り重なっていく作品の構造も美しい上に、絵画を交えた画面の作り・描き分けもとても美しい作品。…ただ、作品単体として、ホラー漫画・怪奇漫画としてとても面白い作品ながら、キーパーソンがホームズに対するモリアーティの様な立ち位置になってしまって、いや、でもそこまで魅力のあるキャラでも無いし、この作品にそういう敵役みたいなレギュラーキャラは居ない方が良いんじゃ…と面倒な思いを抱えてしまった次第です…。
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